得も損もない言葉たち。

日常を休まず進め。

あなたのクスッとをください。

インターネットと、のらくろの思い出。

 

 

ぼくは、のらくろを、小学校の時に知った。

祖父が、ぼくに教えてくれた漫画。

ほかにもいくつか教えてくれたのだけど、

特にしっかり覚えているのは、のらくろ

 

 

のらくろ という名前の黒い犬の兵隊が、

知恵をしぼって出世していく話だということは、

語り部役である祖父の話で伝わりました。

ちなみに、

話が進むたびに「のらくろ伍長」「のらくろ軍曹」というように、

どんどん出世していくスタイルなので、

今で言う 島耕作シリーズ のようなものだと気づいたのは最近の話です。

 

 

ただ、インターネットがまだ側に無かった小学生。

のらくろの顔が分からない。

黒い犬で兵隊、体はそんなに大きくなくて、知恵をしぼって出世する。

主人公なのだろうけど、どんな顔でどんな言葉を話すのか気になって仕方なかった。

 

 

ある日、家へ行った時に一枚の紙を手渡された。

それは、祖父が描いた、のらくろの絵でした。

ただ、その絵が下手なのか、上手なのかすら分からない。

 

思っていたより体が大きいが、本当なのだろうか。

もっと子どもだと思っていたら、随分おとなのような顔をしているぞ。

 

いろんなことを想像しながら、

その絵が、ぼくの頭の中で「のらくろ」の顔になった。

 

いつもその話を聞くのが日常になっていたので、

作者は田河水泡という人だと聞いていたが、

もはや、作者はおじいちゃんなのではないかと思うぐらいでした。

もしぼくに孫ができたら、バレるまでは、

ワンピースはぼくが作ったことにしようかなぁ。

 

 

 

いつもふたりで近くの古本屋へ行っていた。

ぼくは、こち亀が大好きで、

一冊100円の単行本を2冊買ってもらうのがお決まりになっていた。

その店のレジで、ぼくたちは驚きの出会いをした。

 

 

大特価!のらくろ漫画全集1万6000円!

 ※田河水泡のサイン入りです

 

はじめて出会った、黒い犬だった。

200円しか使わない予定の古本屋で、

祖父はすぐに1万6000円の漫画を買ってくれた。

辞書より分厚い漫画。

あんなに嬉しそうに物を買い与えてくれたのは、初めてだった気がする。

戦時中の自分を支えてくれた漫画家のサインが入っていて、

それを孫と読む時間ができたという嬉しさだったんじゃないだろうか。

だから、即買だったのだろうなぁ。

 

 

あれから、10数年の時が経った。

家の本棚では圧倒的に大きくて重いその漫画全集は、

いまもたまに、ぼくの好奇心をくすぐる。

語り部役だった祖父はもういないけど、

こうやって作品とは出会うことができる、

もっと知りたいと思えばネットで購入だってできる。

思い出と、近い世の中になっている気がする。

 

 

 

今は、インターネットがたくさんの情報を教えてくれる。

漫画全集と奇跡の出会いがなくたって、

その人との思い出に繋がる瞬間はたくさんある。

それってすごいことだなぁって思いながら、

いまぼくは、のらくろを検索して、

こんな話があったんだ!とか、

こんな登場人物いたっけ?とか考えたりしている。

田河水泡という人物にも興味がわいてきた。

 

すべての根っこには、教えてくれた人がいる。

 

語り部って素敵だなぁ。

インターネットってすごいなぁって改めて思いました。

 

 

あぁ、じいちゃんの書いた のらくろ は、

もっとスリムでモデルみたいな体型だったなぁ。

顔もぜんぜん違ったなぁ。



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