タイムトラベルを、起こすのだ。銀行員に潜入。12マス目
突然ですが、柴咲コウさんが好きです。
どれくらい好きかって、
出演していたハーゲンダッツのCMを、ずーっと眺める夜があるくらい好きです。
NHKの大河ドラマ『おんな城主 直虎』だって、第一回を待ち望んでいたくらいだ。
それはそれで寂しかったりするので複雑です。
で、その『おんな城主 直虎』なのだけど、なかなか成長しない。
今日こそは、今日こそは、って思ってテレビを見るけど、一向に成長しない。
と言うのも、幼少時代で4話つづくため、
なかなか柴咲コウさんをお目にかかれないのである。
すべてを見ているわけではないので、出演済みかもしれないのだけど。
幼少時代がこんなに長いドラマはめずらしいのじゃないだろうか。
だいたいのドラマでは、再現シーンでちょっとだけ幼少時代が描かれるか、
もしくは、長くもって1話ぐらいだろう。
次の話からは、「20年後」というナレーションが入り、主演の登場である。
きっと、演技をする子役さんたちが素晴らしいのだろう。
画がもつ。充分、見ていられる。
だからこそ、柴咲コウさんは温存され、堂々の登場をはたすのです。
ぼくの、深い柴咲コウさんへの愛と、浅い大河ドラマの演出への考察はさておき。
今日も明日も、銀行員に潜入しているわけで、その話を。
寒すぎる毎日。
海沿いの営業エリアを自転車でまわるのは、何らかの罰かと思うぐらい厳しい。
きっと、ぼくの前世が犯した罪を、自転車にのって償っているのだろう。
だからこそ、これ見よがしに「さむいわぁ~!」って海に向かって叫ぶ。
これ見よがしと言いながら、周りに誰もいないか確認はするけど。
アポイントをとっているお客様は、
暖房がきいてたり、ストーブが置いている部屋へ招き入れてくれる。
電気カーペットというのは、あれは銀行員のためにあると思う。
お客様はソファ、ぼくは床という位置関係が多いので。
あれは銀行員のためにあるのです。
問題は、アポイントをとらずに営業に行った先のお客様だ。
突然現れた、スーツの男に対する目線は、吹き付ける風のように冷たい。
ドアを開けてくれたら良いほうです。
それも、この寒さであっという間にドアは閉まる。
「暖を…、暖をとらせてください」と、目で訴えかけるが、
そんなのうまくはいかないことは、マッチ売りの少女で学習している。
どうしようか。
寒すぎるけど、コンビニに1日に3回も逃げ込めない。
次の家、次の家へとピンポンを押して銀行員はまわる。
まわりにまわって、ようやく。
「とつぜんなに?まぁちょっと寒いから入りなさい」
ホームアローンで、ケビンが駆け込んだ教会のように、
ホームアローン2で、ケビンが駆け込んだカーネギー・ホールの天井裏のように、
聖母のようなお客様に玄関へ招き入れてもらえたわけです。
ま、それだけで満足してしまうのが、ぼくのダメなところで、
雑談をすこしして、結果も出ずに帰ることになるのですが。
それから数日、
もう一度あらためてアポイントをとって、そのお客様の家へ。
定期預金だったり、運用商品の話をしようとするも、
「あなたのせいで、楽しみな韓国ドラマがわけが分からなくなったわ」
と会ってすぐ、笑いながらお客様に言われる。
どういうことか一瞬わからなかったけど、頭の中で整理して答えを出しす。
きっと、ぼくと話をしている間に、
大切なシーンが進んでしまったんだ。
二人が恋に落ちるシーンや、恋人が事故にあうシーン、
はたまた犯人が判明するシーンが過ぎ去ってしまったんだろうと。
どういうことか聞いてみた。
「部屋にもどってテレビを観てたら、
知らないオヤジと、オバサンが泣きながら抱き合ってたのよ。
どうやら話をしている間に、40年も時が過ぎてて、
あんなに可愛かった子どもが、一瞬でオヤジになってたわ」
「あぁ…。どうやらぼくは、タイムスリップを起こしてしまったわけですねぇ。」
…
しばらくそのドラマの話で盛り上がって、
ぼくはお客様から「タイムトラベルを起こす銀行員」として、
すこしだけ気に入ってもらえたみたいです。
みなさんは、『おんな城主 直虎』を観ているときに、
銀行員が来たらくれぐれも注意するようにしてください。
帰ってきたら、とつぜん数十年の時は流れているかもしれません。
そう、彼らはタイムトラベルを起こす職業なのです。
どんどん寒くなるなぁ。
また、明日、寒いって叫ぼう。
つづく。