得も損もない言葉たち。

日常を休まず進め。

あなたのクスッとをください。

「劇場版 ぼくと夢の国」 

 

幼稚園のころに、はじめてディズニーランドへ行った。連れて行ってもらった。母に起こされたら、布団で寝たはずが、なぜか車の中にいて。「まっすぐ見ときや~」と父に言われて、高速道路をぼーっと眺めていた。どこにいるのか、なぜ車の中にいるのか、何もわからずしかも眠たい。しばらくして、ぼくの目の前に現れてきた建物が、シンデレラ城であると気づいて、驚きはしゃいだ。

 

 

「え、ディズニーランド?」と聞いたら、

「ちがうで似たような建物やで」と父は言った。

 

 

あの時は、何がなんだか分からなかったけど、きっと父も母もニヤニヤしていたに違いない。なんてたって、前日に一緒にディズニーランドの雑誌を読んでいたからだ。どんな乗り物があるかとか、ミッキーの家がどうとか。とにかく、「ディズニーランドに行きたい」と叫んだ覚えがある。しっかりと、ネタふりをした上で、布団で就寝したぼくをこっそり車に乗せて、夢の国まで運んできたのだ。あの頃の、ふたりの顔や会話を知りたくて仕方ない。ぼくが寝ているあいだ、どんな会話をしていたんだろう。そういう意味では、100点満点のリアクションをした自信がある。

 

 

 

 

 

なつやすみ、神奈川県川崎市。JR登戸駅から出るバスに乗って、となりの席に座った家族を見て、ぼくはディズニーランドにはじめて連れて行ったもらったことを思い出していた。

 

 

ドラえもんがいっぱいなんだよね!」

「これパーマンでしょ?」

「あっ、あっちはコロ助だ~」

 

 

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パーマンで統一された夢のようなバスは、たくさんの家族連れとウキウキのぼくを乗せて進む。「いまから通る橋には、ドラえもんが隠れているんですよ~」運転手さんの案内で、みんなが窓の外を見た。ぼくも、ドラえもんを探す。そして、わぁ~とみんなで言う。

 

 

10分ほどバスに揺られて、徐々に近づいてくる建物。「あっ、あれや~」ぼくが幼稚園に通っていたら、きっとはしゃいで小躍りをしているはず。つきました、兵庫県からやってきまして。

 

 

 

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川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム

 

 

 

「SF…すこしふしぎな世界をお楽しみください」

運転手さんが、またぼくの心を躍らせてくる。バスを飛び降りたのは、いつぶりだろう。もう、大好きで、大好きでたまらない藤本先生のミュージアム。ずっと来たくて来たくて、ようやく念願をかなえました。

 

 

 

ちょうどいま、コロコロコミックが40周年を迎えるため、原画展をやっていました。ぼくが小学生の頃に、毎月発刊を楽しみにしていた漫画雑誌。その表紙には、いつもドラえもんがいます。劇場版ドラえもんの連載は、いつもコロコロでされていて、その原画がたっくさん飾られていました。ドラえもんの映画は、ほんと大好きで、どれがいちばんかなんて選べないぐらいで。その実際の原稿が、各作品の解説といっしょに並んでいる。

 

 

「劇場版 ぼくと夢の国」

というタイトルがついてもええんちゃうかと思うぐらいの時間。

 

懐かしい…

 

しばらく、父とはじめてふたりで観に行った映画『のび太と銀河超特急』を見つけて、その絵をずーっと眺めていました。母と映画を観に行くと、いつも感想文を書かされる変わった教育を受けていたので、父と観に行ったときはすごく気楽だったなぁと思い出したりしました。パンフレットも買ってもらったことを覚えているし、すごくワクワクした作品だったなぁ。

 

 

 

Fシアターはタイムマシン

 

 

展示を抜けると、そこにはFシアターというものがあって、小さな映画館でドラえもんたちが出てくるアニメが上映される場所があります。日曜日だから、シアターはぎっしり詰まって、夏のちびっこ上映会と言っていいような状態でした。

 

 

「だれがタヌキだぁ!」

 

「ドラえも~ん」

 

 

ドラえもんがタヌキに間違われたり、のび太君がドタバタで転んだり、小学生たちはとにかく大うけです。つられてぼくも楽しくなる。そっか、いつの間にか、ひとりでドラえもんを観ていて声を出して笑わなくなっていたんだな。小さい頃は、タヌキって言われただけで、大爆笑だったなぁ。小学生と一緒にアニメを観ていると、その時間、ぼくも同じ年になっていたみたいで、しあわせに笑いました。

 

きっと、あのシアターはタイムマシンなのです。

 

 

 

 

グルメテーブルかけ、ほしい。

 

 

ミュージアムには、もうひとつ目玉がありまして。それがカフェなんですよね。今でいうところの、SNS映えしそうなかわいいメニューがたくさんあって、開門と同時に整理券へ走ってる人もいました。ぼくはと言うと、とにかく展示が観たくて、ひとり別ルートを進んでいたので、今回は外から食べてる人たちを眺めるだけで我慢。グルメテーブルかけが欲しいもんです。

 

 

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一緒に昼寝したかった

 

 

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あ、黒べえ

 


自撮り棒、ほしい。

 

 

庭をぶらぶらして、たくさんの仲間たちを見つけて、写真を撮って。ほんとうは、一緒に写りたいけど、シャッターを押してもらう勇気もなくて、外で買ったどら焼きを食べながら川崎市の空を見上げました。と同時に、階段の下を見下げました。

 

あ…

 

 

 

 

 

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映画にも出てきた石化されたドラえもんが、ミュージアムのはじっこにありました。月の光が当たると、呪いが解けて動けるようになるはず。のび太魔界大冒険、怖かったなぁ~。これ、トラウマになった人もいたんちゃうかなぁ。

 

 

 

四次元ポケットが、ほしい。

 

 

満たされて、満たされて、最後にお土産コーナーに行きました。すべての商品が大好きなF先生の作品のグッズ。ほしいものが、ありすぎる。どうしよう。カゴがどんどん重くなってしまう。あぁ、社会人でよかった。好きなものが、買えるというしあわせを初めて感じた瞬間でした。今年の夏は、ほんとうに暑くてつらかったけど、ぜんぶ今日のためにあったんやなぁと自分に言い聞かせて、その手をとめなかった。

 

 

 

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「すいません、これは郵送できますか?」

 

「ごめんなさい、やっていないんです…」

 

 

レジに行く前に、10分悩んだものがあった。どうしよう、大きすぎる。帰りの夜行バスで、どうやって持って帰ったらいいんだろう。お菓子や雑貨はいいけど、これはさすがに買えないかも…。四次元ポケットは、ぼくには無いし…。でも、でも、どうしてもほしくて、買ってしまった。

 

 

 

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父と観に行った、はじめての映画の複製原画です。展示で思い出にひたって動けなくなった絵を買ってしまいました。とっても大きくて、重くて。物流が発展するまえの画商のような格好で、横浜観光をすることになりました。帰りのバスも、たいへんでたいへんで。

 

でも、いまぼくの部屋に置かれたこの絵が、ぼくを元気にしてくれている。あのワクワクをぼくも作ってみたい。夢を忘れないでいようと、眺めるたびに奮起できる気がしています。あの頃に帰れないけど、でも、帰れるような。それは自分の気持ち次第。これからもずっと、あの頃の映画館の自分でいようと思うんです。

 

 

 

藤本先生ありがとう。

 

 

 

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ミュージアムの中庭、あまり人が寄ってこない場所に、この像がありました。

藤本先生がじぶんの作った仲間たちと手を取り合っています。

 

 

 

ウォルトディズニーのように。

ディズニーアニメと雰囲気はちがって、

すこしふしぎな世界だけど、

おなじようにいつまでも夢をくれる。

ドキドキさせてくれる。

 

藤本先生は、いつまでもぼくの憧れで、

たくさんのキャラクターは、いつまでもぼくの友達で、

一緒にすごしてきた時間は、いつまでもぼくの思い出です。

 

 

それにしても、絵を持って旅行するのは、たいへんでした。

 

 

また行きます。

どこでもドア、ほしい。