白玉の先に。
帰り道の電車で聞こえてきた言葉。
「調理実習を乗り越えないとあかんわ」
なんてことだ。
調理実習は、乗り越えないといけない壁になってしまったのか。
ぼくは、好きだった、調理実習。
エプロンつけて、バンダナを巻いて、
忘れた人は給食当番の服を着て。
先生の言われたとおりに作るのに、
美味しくできる班と、できない班があったりして。
みんながおなじように進んでいるのに、
片づけが早い班と、昼休みにまで突入する班がある。
気になる女の子と、おなじ班になってたりすると、
「料理って素晴らしい」って思い続ける時間になる。
隠し味とか言ってちがう料理につかう調味料を、
調子に乗って使って、まわりに白い目でみられるやつがいる。
調理実習が乗り越えないといけない壁なのか。
乗り越えた先に何があるんだろうか。
あんなに楽しい時間なのに。
みんなでダラダラつくる、
ミートソースのスパゲティに勝てるものはあるんだろうか。
きっと、彼らにはもっと楽しい時間がいっぱいあるんだろう。
カラオケ行ったり、USJに遊びにいったり、
LINEでやりとりしたり。
それでもやっぱり、
白玉フルーツポンチを作るのはめっちゃ楽しいんだけどなぁ。
白玉の先に、いったい何が待っているんだろう。
そんなことを、ボーっと考えていると、
さいごにまた聞こえてきた。
「ふふふ、あの白玉地獄を乗り越えないとあかんよなぁ」
「うん、あれは地獄や」
なんやねん、
ボルダリングみたいに、
楽しそうに壁を登っとるやないのよ。
あ。
まっすぐな壁に、
石をたくさん貼り付けたら、
ボルダリングになるな。
ってことは、
いろんな壁が自分の前に立ちはだかったら、
たくさんのポイントを作っておいて、
どこに進むか、足を置くか、手を伸ばすかを考えながら登ると、
とても楽しめるんじゃないだろうか。
それにしても、
来月のノルマという壁は高いし、
なかなか石が貼りつかないのである。