得も損もない言葉たち。

日常をひとます、休まず。

あなたのクスッとをください。

ほんものラルフローレン。

 

にせものと一緒に、少年時代をすごした。

 

 

お祭りに行って、もらった遊戯王のレアカードは、

ザラザラの印刷紙だった。

 

入手困難な状態でじいちゃんが見つけてきてくれたベイブレードは、

中央に漢字で「風」と書かれた made in china の本物の中華ゴマだった。

 

ゲームセンターで、すっごい難しい条件のUFOキャッチャーがあって、

仲間と必死に挑んで手に入れたPSPは、よく見たらPOPだった。

 

 

いつだって、にせものに気付くのは手に入れたあと。

喉から手が出るほど欲しかったものをゲットした最大限の喜びがあって、

数秒後に謎解きゲームのようにちょっとずつ真実が暴かれていく。

 

 

「あれ?このPSPはカセットを入れるところがない」

 

PSPって単三電池で動くんだったっけ?」

 

「ん?7種類のゲームが内蔵されてる?」

 

「え?ゲームウォッチ?」

 

「ちょっとまって、……P O P」

 

 

こうやって、一瞬の喜びは、永遠の絶望に変わる。

 

本当は、そのにせものを愛すればいいのだけど、

そんなわけにもいかなくて。

周りのみんなが持っている物と圧倒的に違うべつものを、

仕方なく机の引き出しにしまってしまうのでした。

 

 

大人になってから、

というか自分でお金を稼ぐようになってから。

にせものとは、随分ごぶさたの生活をしてきた。

 

 

クロックスも、ちゃんと専門店で買うようにしたし、

iPhoneだって、ちゃんと本物ですよ。当たり前ですけど。

 

唯一、にせものを好んで選んだと言えば、

 

コンビニで売っている「ほぼカニ」と「ほぼホタテ」ぐらいでしょうか。

カニカマってのは、本当によくできていて、

本物のカニをしばらく食べていないぼくにとって、

もはやカニカマこそが本物と思えるぐらいの美味しさをしているわけです。

 

カニ食べ放題ツアーに、もしぼくが参加しても、

カニカマによくにた生き物食べ放題ツアーにしか思えないかもしれません。

大げさですね。はい、大げさです。

 

ぼくに誰か、本物のカニの味を思い出させてください。

ついでに、本物のPSPもほしいです。

ベイブレードと、遊戯王カードはいりません。

 

 

という訳で、自分で物を買えるようになってからは、

ひとりで満足できる食べ物いがいは、

にせものを選ぶことはなくなっていたのです。

 

 

意外に人はそういうところを見ているし、

にせもののブランドを持つぐらいなら、

ふつうの物を持ち歩くほうがええに決まってるんじゃないかと。

 

 

だからこそ、無地のシャツとか、

どこのメーカーか分かっても分からなくても、

なんとなくいい感じの絵が書かれた服を探し出すことをしてました。

 

 

そんなぼくが、

ラルフローレンを履くようになった。

 

 

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こんなやつです。

おっさんが馬にのって、掃除機を振り回しているマークのやつです。

コンセントが伸びていないので充電式だと思われます。

 

 

…まぁ、あんまり変なことを言うもんじゃないと思うのでこれぐらいにして。

 

 

ラルフローレンの靴下を履いて仕事に行く日ができました。

 

あんまりファッションとかよく分からないぼくでも、

たぶんいい物だってことぐらいは何となく理解できます。

 

 

オシャレは足下からという話も聞いたことがあるし、

それはそれで何かぼくも生まれ変わったかのような気分になるのかなぁとか、

わけのわからない理由で高揚感を得たりしていて。

 

 

どうして、そんな急に、

ラルフローレンを身に付けるようになったかと言いますと。

 

実は、お客様がぼくにくれた靴下だったんですね。

 

 

「営業さんは、靴下とか消耗品やろ?これ買っといたから使いなさい」

 

 

ある日の帰り際に、そっと渡してくれたのがこの靴下でした。

 

夏になると、お茶を出してくれたり、スイカを食べさせてくれたり、

そうめんが湯がかれていたり、ハンドタオルをプレゼントしてくれたり、

いろんなものたくさんのお客様からもらうのですが、

その1つがこのラルフローレンでした。

 

 

 

「こんないいもの、もらえませんよ…」

 

 

ぼくは、さすがに気が引けてしまった。

 

 

「ええよええよ、こんなん安物だから!」

 

 

お客様の金銭感覚と、ぼくの金銭感覚の圧倒的格差。

でも、ありがたく気持ちを受け取ることにして、

そっと靴下を鞄にしまって帰りました。

 

 

なにより嬉しかったのは、

営業の大変さを気遣ってもらえたということ。

 

 

銀行員をしていて、何より考えていることは、

相手の気持ちをどれだけくみ取ってあげられるか。

納得したお金のありかたを見つけ出せるか。

 

 

理不尽なことばっかりだけど、

その一点を見つめて仕事をしてきたことを、

認めてもらえて嬉しかった。

 

 

そして、翌日から、

ぼくの靴下ローテーションには、

紺色の生地に赤いロゴのラルフローレンが追加されたわけです。

 

 

 

 

 

余談ですがこの靴下、

数回履いただけで全体的に色がはげてきました。

 


いい靴下のはずなのに、

かかとがすぐにダメになってきて、

それはぼくが営業を頑張っているからじゃなくて、

あきらかに生地の問題だと分かるような劣化の仕方をしていて。

 

 

あれ?おかしい。

 

 

そんな弱いわけがないぞ、

だってラルフローレンやぞ。

 

 

掃除機をふりまわした馬に乗ったおっさんやぞ。

 

 

 

…ん?

 

 

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あれ?

 

 

掃除機じゃない。

 

このおじさんが振り回しているのは…

確実に投げ縄だ。


そもそも、馬の向きも違う。


これは、そうだ、

これは、カウボーイだ。

 

 

 

靴下のどこを探しても、

ブランド名は書かれていない。

 

 


次の日に、営業エリアの100均ローソンの靴下売り場に、

ぼくのものと同じラルフローレンがあった時に、

お客様の言っていた「安物」という言葉が、

本当だったことに気付いた。

 

 

ぼくは、見てはいけないものを、見つけてしまったんだろうか。

本物の高い靴下をもらったと思って、

ありがた~く大切に履きつづけていたほうがよかったんだろうか。

 

 

 

たぶん、そんなことは関係ない。

 

 

お客様の気持ちが嬉しかったのだ。

いいものをもらったから嬉しいとか、

そういうことじゃなくて、

ぼくのためを思ってくれたその事実こそが最大の贈り物だったのだ。

 

 

 

 

今日も、ぼくはラルフローレンを履いて仕事に行った。

 

若干、限界が近づいている。

 

靴下のゴムは伸びてきているし、

足の先も、そろそろ穴が開きそうだ。

 

 

しっかり履きつぶそうと思っている。




 

 

 

わが家にある、

ちょっといいものは、

にせものラルフローレンです。

 


でもこれは、

ぼくにとって、

ちょっといい、

ほんものラルフローレンでもあるのです。

 

 

営業をしていたら、

靴がむれて、足が臭くなる。

 

 

今日も、たくさん歩いて、

順調に足が臭くなったので、

お風呂に入って叫ぼうと思います。

 

 

 

 

つかれた~~~~~~~~~