得も損もない言葉たち。

日常をひとます、休まず。

あなたのクスッとをください。

コロンボと、古畑と、お母さんにはかなわない。

 

 刑事コロンボが大好きだ。

 ピーター・フォークの演じる「うちのカミさんがねぇ」が口癖のコロンボ

 さえない風貌のおじさん刑事である彼が、完全犯罪を試みる犯人を、

 ひょうひょうと追い込んでいくドラマ。

 コロンボの行く先々で起こる殺人事件。

 姿の見えない犯人をちょっとしたヒントをもとに、

 特定していく姿がかっこよくてたまらないのです。

 

 おなじぐらい、古畑任三郎が好きだ。

 田村正和の演じる「えぇ~」とおでこに手をあてるポーズが有名な古畑。

 すこし、いや、だいぶ変わり者の古畑任三郎が、これまた完全犯罪を試みる犯人を、

 ひょうひょうと追い込んでいくドラマ。

 普通の人間からしたら、何でもない現場の状況や容疑者の言葉を古畑は見逃さない。

 ジェンガを崩すほど簡単に、犯人のアリバイを崩します。

 ちなみに、多少無理のある展開の話もありますが、古畑は視聴者に語りかけます。

 「えぇ~。45分の間に事件を解決しないといけないので、すいません~」

 

 どちらも、倒叙という手法をとっており、

 ドラマの冒頭で犯行のシーンが描かれるので視聴者は犯人を知っています。

 その犯人を、コロンボや古畑がどうやって追い詰めるかを見守る構成です。

 古畑任三郎の脚本は三谷幸喜さん。

 刑事コロンボに影響を受けて、古畑任三郎を生み出しました。

 

 

 

 …と言うわけで、今日は「お母さんには、かなわない」って話を書こうと思います。

 前置きがドラマ2つの説明になってしまってすいません。

 なにせ、ちょっと必要かなぁと思ったので。

 あと、ぜひ観てもらいたい作品だからです。

 お許しください。では、本題に。(前置きをしっかり話すのも古畑流です) 

 

 

 

 ぼくは、高校時代にすこし不登校生徒でした。

 夏休みは、人より1週間長く休みました。

 始業式の日に、早退して家で「笑っていいとも!」をみてました。

 明日は学校へ行こうと思いながら、月曜日のいいとも選手権をみていても、

 気づけば火曜日のいいとも選手権をみているような生活。

 水曜日は学校でお昼休みをすごしても、木曜日は家で選手権。

 

 イジメなんてなかったし、友達もちゃんといた。

 お昼休みに大富豪をするのも楽しかったし、先生も面白い人がいた。

 理由を考えてみたけど、あんまりなくて。

 強いて言うなら、部活も入ってないくせに、勉強もついていけない。

 周りは進学校でよく勉強ができるし、なにかに一生懸命。

 多分、何も取り柄が無い自分がすこし嫌だったような気がします。

 

 両親は共働きだったので、日中は家にいない。

 ひとりで過ごすお昼が大好きでした。

 ただ、先生は心配します。

 風邪で休むと言っても、生徒の自己申告だけじゃ信用してくれません。

 うまくやり過ごせる日もあったけど、

 怪しい日には親の携帯に電話がかかるようになっていくのでした。

 

 仕事から帰宅した親に、説教を食らう日々。

 理由を聞かれても、ない。

 なんとなく嫌なだけ。

 毎日、母が帰ってきたらびくびくする夜。

 それでも、お昼にひとりでいたい。

 作ってもらった弁当を家でたべながら、テレビがみたい。

 今思うと、そんなに毎日が面白かったのかは疑問だが、

 それでも学校にいるのが嫌だった。

 

 

 母がいつもぼくに聞くのは、学校になんで行かないかの理由だけだった。

 イジメなのか、勉強の悩みなのか、それ以外か。

 理由を教えてほしいと何度も言われた。

 ビンタもされた、それでも理由は分からないしか言えなかった。

 

 ある日の夜、また母に怒られていた。

 「あんた、今日も学校休んだやろ。正直に言いなさい」

 突然、言われて思わずぼくは自白したのです。

 う~ん、おかしい。

 今日は担任の先生もうまく誤魔化せたし、携帯には電話が入ってないはず。 

 それでも、母は悟っていた。はてなマークが頭を埋め尽くす。

 なぜ、ぼくはサボりを見抜かれたのか、聞いてみたのを覚えている。

 

 「なんで、ぼくの嘘がわかったんよ…」

 

 母は半笑いで言った。

 「あんた、今日は家で弁当を食べたやろ。

  箸箱のお箸が一切よごれてないし、家の箸が使われてるやんか」

 

 ただただ悔しかった。完全犯罪をちょっとしたほころびで見抜かれたのである。

 コロンボや、古畑任三郎が、

 現場にのこされた小説にしおりが挟まっていたことから、自殺を疑うように。

 料理下手の容疑者の家に、ごちそうが作られていたことから、

 犯人と容疑者の関係性を見つけ出すように。

 

 

 「お母さんには、かなわない」って、ぼくが心底思った瞬間でした。

 

 

 ぼくは、それからしばらくして学校に通いはじめます。

 受験もして、志望校には行けなかったけど就職もしました。

 母に負けたから学校に通ったわけではありません。

 ひとりでいた時間に、沢山の映画をみました。漫画やドラマも。

 インターネットで、CMやキャッチコピーをながめていました。

 かっこいい大人をたくさん見つけて、一方的に憧れました。

 今のぼくを構成しているのは、そこで出会った沢山の「面白い」ものです。

 その世界にすこしでも近づきたいと強く思ったことが、

 ぼくが学校へ通った、ただひとつの理由です。

 

 いまは、ぜんぜん遠いところにいるのですが…。

 まぁ、人生は、なかなかうまくいかないもので。

 いつも、夢でうなされています。

 だって夢の中では、楽しいことをしてるんだもの。

 

 

 コロンボも、古畑も、犯人の手口を見抜きます。

 自白させます。どうやって殺したかを、きれいに当ててしまいます。

 ただ、どんなに簡単に解決した事件でも、最後に犯人に聞くことがあります。

 それは、犯行理由です。

 どんな刑事も、名探偵も、犯行理由だけは見抜くのに手こずる。

 人の心の中だけは、やっぱり分かりえない世界なのかもしれません。

 

 自分の子どもの、心の中が分からなかった母はどんな気持ちだったのだろう。

 最近、ふっと考えたりしました。

 

 そろそろ、しっかり自白しようかなって思っています。

 「なにもない自分が嫌でしょうがなかった」って、あやふやな犯行理由を。

 

 

 

 えぇ~、以上。駄作でした。