得も損もない言葉たち。

日常を休まず進め。

あなたのクスッとをください。

ホッチャラ行きにしてやろう。【ショートショート】

 

 

 彼らは悩んでいた。そして、苦しんでいた。

 すこし表現が複雑ではあるが、苦しませることを考えることに、苦しんでいた。

 

 

 「では、一体どういうものをヤツらは苦しむのだ」

 

 「それが、いまだに、よく分からないのです」

 

 

 なぜ、このような悩みに彼らは直面したのだろう。

 それは、いわゆる周りが嫌がる仕事をなすりつけられたからだ。

 生物を苦しませること、罰を与える仕事は後味が悪いからだ。

 また、仮に殺すに至っても、苦しませないといけないからだ。

 

 その絶妙なところを探すために、会議は毎日続いていた。

 誰かが言った。

 

 

 「資料を見ててもラチがあかない。外に出よう」

 

 

 これまで彼らが外へ出なかったわけは、よく分かる。

 見知らぬ星での調査は、怖いからだ。恐ろしいからだ。

 

 渡された資料をのぞき見してみたところ、危険情報にはこう書かれている。

 

 

 『時折、ミサイルが発射されている』

 『われわれの星に、移住する計画を練っているものがいる』

 『全員が、歩きながら小型の機械を操作し、おなじ場所に集結する』

 

 

 これだけ聞いて、調査に出かけないのに十分な情報だろう。 

 しかし、期限は迫っていた。

 

 

 「もし仮に見つかったりしたら、解剖されてホッチャラ行きだ。

  彼らの言葉でだと、地獄行きだ」

 

 

 「でも、仕方ない。この仕事を成し遂げないと報酬は貰えないのだから」

 

 

 会議の最後に、くじ引きが行われた。

 そして、一人の調査員が決まったのだ。

 与えられた任務は、地球人を悶絶させ、苦しませる罰を探し出すこと。

 

 

 そして、数日が経ち、ひとつの罰を見つけ出してきたのだ。

 会議室に戻ってきた調査員の顔は晴れやかだった。

 そして、プレゼンテーションが行われた。

 

 

 ・地球人は必ず、声を出して悶絶すること。一瞬ですること。

 ・彼らの中で、“地獄”という表現がされていること。

 ・史実としても、拷問として利用されていること。。

 

 

 これしかない。もう、これほどのものはない。

 罰が決まった。ようやく決まったのだ。

 

 

 長い会議は終わった。

 そして、罰を執行することで、この仕事も終わりを迎える。

 

 彼らは、満足げな顔を浮かべて、自分たちの星へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ここは、とある星。

 

 不時着した、地球から来た宇宙船がひとつ。

 パイロットの二人は、服をはぎ取られて並ばされている。

 そして、その前には池のような大きな容器。

 なかには、たっぷりの水分。

 

 

 「お前たちは、我々の星へ不法に侵入した。

  これから、罰を与える。それに耐え抜いたならば、生かして星へ帰してやろう。

  ただし、もし死んだのならば、それはそこまでの運命だったと思うがいい」

 

 

 執行人が、地球人たちに向けて話をした。

 しかし、彼らに伝わっているのかは分からない。言語が違うから。

 まぁ、どこの星も形式にこだわるのだろう。

 

 

 そして、裸の地球人は、その容器に無理やり入れられた。

 

 

 

 

 「うぅ~~~~~~~~~~」

 

 

 「あぁ~~~~~~~~~~」

 

 

 

 「ぐぁぁ~~~~~~~~~」

 

 

 

 「くぅ~~~~~~~~~~」

 

 

 

 辺りに、言葉にもならない声が響き渡る。

 大成功だと、罰を考え出した彼らは喜んだ。

 

 

 

 

 

 そこから、数時間後の話ではあるが、

 宇宙船に乗って、地球人は喜んで帰って行った。

 

 全く、苦しんだ表情もしなかった。

 悶絶したのは最初の数分。そこからは笑顔まで見せるぐらいだった。

 

 

 

 「なんと、我慢強いやつらなんだろう。相当の訓練を積んだに違いない」

 

 呆気にとられながら、約束した以上、彼らは地球人を外へ送り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地球人のパイロットたちが、レポートを書いている。

 

 

 『温泉に入れてくれる星を発見した

  湯加減もちょうどよく、長い宇宙の旅にはピッタリである』

 



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濡れ手で、なにしたらいいのさ。【ことわ・ざ】

 

 家に帰ったら最初に何をしますか。


 小さいときに、親に沢山言われました。

 

 

 「お家に帰ったら、手洗い!うがい!」

 

 

 予防ですねぇ。

 特に、インフルエンザの季節はもうドアを開けた瞬間に、

 母親の声が飛びついてきました。

 


 では、やってみましょう。

 もし、外でこの文章を読んでいるなら、帰ったら最初に手を洗ってみてください。

 

 

 

 

 今日のことわざは、こちらです。

 

 

 

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 手を洗ったら、次はうがいをしましょう。

 

 次に何をしましょうか。

 

 そうです。お米を掬うのです。

 

 

 

 「濡れ手に粟」ってのはどういう意味か知ってますか。


 とりあえず、濡れ手に米をしてみてください。

 そしたら、意味がよく分かるはずですから。ね。

 

 

 米櫃に、さっき洗った手を突っ込んでください。

 

   何合か、わからないけど、とりあえず。

 

 つぎに、その手でお米をすくってください。

 

 

 

 どうなりましたか?

 

 

 そうそう。ご察しの通りです。

 両手が、戦隊物の怪人のような状態になるんですよね。

 

 


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 さて、彼はピンチになったら、巨大化できるんだろうか。

 どうなんだろう。

 会社では、縮こまってるんじゃないかな。

 

 …やめておこう。会社に行くのが嫌になりそうだ。

 

 

 

 で、何の話かって、濡れ手に粟の話。

 

 

 粟って言うのは、つまり雑穀です。

 栗じゃないですよ。

 もっと小さい粒です。

 イネ科の植物です。猫じゃらしみたいな。

 


 日本では、お米よりも先に栽培がはじまった植物なんですよ。

 縄文時代からあったみたいなことも。



 

 中高の歴史の教科書にも、ヒエやアワを食べて人々が暮らしていたって、

 書いてあったりしましたね。思い出しました。

 

    現在のご家庭で、ヒエやアワを備えているところがあれば、

    それは是非、突撃したいものであります。

 

 

 

 で、こういう問答が行われるわけです。

 

 「ここにある粟を、手を使ってたくさん掬い取るにはどうしたらいい?」

 

 「水に手を浸せば、たくさんくっついてくると思いますよ」

 

 ご名答。

 

 

 

 たくさんの答えがあるとは思います。


 ・大きな手袋をはめてみる

 ・手を使って、スコップをつかう

     とか


 もうなんでもありなんですけどね。

 

 

 

 ただ、ここで大切なのが、

 “濡れ手”は、水に手を浸すだけでいいってことなんです。

 

 大きめの手袋なんてないもんね。

 まして、スコップなんて絶対ない。な~いさ。

 

 

    つまり、濡れ手に粟ってのはですね、

 苦労をせずとも、たくさんの利益を得るということなんです。

 

 

 でも、どうなんでしょう。


 手を水に濡らすアイデアを思いついた人ってすごいなって思ったりしてまして。


 だって、いざその場にいたら、

 必死に乾いた手で粟をすくっている自分が想像できちゃうんです。

 

 

 

 

 じゃあ、苦労せずに、たくさんの利益を得ることをどう表現すると、

 ぼくは納得できるんだろうか考えたんです。

 

 

 

 !

 

 

 今日は、ちゃんと思いつきましたよ。

 

 結構、すんなりいきました

 

 

 

 

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 「流しそうめんの、いちばん下」

 

 どうでしょう。

 まったく苦労しなくたって、たくさんのそうめんがタップリと。

 

 ・・・

 

 ・・・

 

 

    いま、目覚めて改めて考えると、

    そんな、うらやましくないですね。うん。

    しっくりもきてない。


    昨日の夜の自分はけっこう感動してたのにな。

 

 

 

 

 

 【濡れ手で粟】

 意味

 苦労せずに、多くの利益を得ることの例え

 

 



 

 余談ですが、

 炊いたあとのお米に、濡れ手は逆効果になりますので、

 おにぎりを作るときはお気をつけくださいまし。





暖簾になにを、しかけりゃいいの。【ことわ・ざ】

 

 今回は、こちらのことわざ。

 

 

 

 

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 意味は分かる。大体は分かる。

 

 

 

 だけど、そもそも、暖簾が何か。

 それよりも、腕押しって何か。

 

 わかってないのに、ことわざの意味は分かっている。

 これは、不思議だ。おかしい。

    

 

 

 

 

 暖簾は、「のれん」。

 

 あれですあれ。町にある食堂とかの入り口にぶら下がっている布。

 

 

 

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 のれんが出ていると、その店は営業中であると分かったりします。

 

    まぁ、横の【営業中】を見てしまうのですけど。ね。

 

 

 あと、今はそんなことをしませんが、

    昔はお客さんが食べ終わって外へ出る時に、のれんで手を拭いていたそうな。

 

 「おいしい店は、のれんが汚い」

 なんて指標があったみたいです。

 

 

 まさに、汚い店ほど美味いというのは、ここにあるのではないのかな。 

 

 不潔と、汚いの違いはここだと思うんです。うん。

 

 ハエが飛んでいるのと、のれんが汚れているのはワケが違う。

 

 

 

 あと、現代においては、

 「おいしい店は、星が多い」

 と言ったところではないのかな。

 

 

 レビューを見て、物を選ぶ時代。

 ネットショッピングには、天体観測が欠かせませんねぇ。

 

 

 

 

 

 さて、腕押しですけども。

 こっちが大本命。理解されていないほうのやつ。

 恐らく、ニュアンスは分かっているけどってやつ。

 

 

  じゃん。

 目の前に、のれんがあって、腕押ししてみてくださいって問題が出る。

 

 悩んだ結果、みなさんはどういう行動をとりますか。

 

 

 

 3秒待ちましょう。

 

 

 1 

 

 

 2

 

 

 ・・・もうちょっとほしいですか。そうですか。じゃあ5秒で。

 

 

 3

 

 

 4

 

 

 5

 

 では、答え合わせをしましょう、

 させてください。

 

 

 スタンディングで、のれんに触れているあなた。

 間違いでございます。

 

 スーツを着ていようとも、地べたに這いつくばって、

 肘は地面に接すること。

 店頭に、椅子がある場合は、それでもいいですねぇ。

 

 

 そして、のれんとがっぷりよっつで組み合ってください。

 

 

 伝わってますでしょうか。

 いやぁむずかしい。

 

 

    味のありそうでない、絵で答えを。

 

 

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 つまりは、腕押しとは、腕相撲のこと。

 

    暖簾に腕押しとは、

 のれんと、いくら腕相撲をとっても張合いがないってことなんです。 

 

 

 

 

 でも、のれんは、腕じゃないじゃないか。

 ってことは、完璧な試合不成立じゃないか。 

 

 だったら、意味は、

 

 「無意味なことに挑むこと」

 

 じゃないのだろうか。

 そんな意見を提出しようと思ったり、思わなかったり。

 それこそ、無意味なことに挑んでるような気もしてきます。

 

 

 

 ほいほい。

    現代における、暖簾に腕押しは一体どんな表現がいいのだろうか。

 

 暖簾と何をしようか。

 それとも、何と腕相撲をしようか。

 

 

 

 

 う~ん。こまった。

 ここまで書いておきながら、答えが見つからない。

 

 

 完全に、無気力なものが見つからないのである。

 いわゆる、生命が宿っているものは少なからず抵抗してくるに違いない。

 

 

 

 なまけものに腕押し

 タコに腕押し

 ねこじゃらしに腕押し

 

 

 

 いろんな物に勝負を挑んでも、ちょっは張合いがありそうなんです。

 

 

 

 ってなると、無機質なものに何かをしかけることになるんですけども、

 これがまた見つからない。

 

 

 

 のれん程に、力のぬけた存在が見つからないのです。

 

 

 あの、ヒラヒラした姿。

 風に身をまかせ、ゆれる切れ込み。

 棒に刺されて、店頭に吊るされる無気力。

 完璧なのです。

 

 

 ここまで散々、書いてきたのですけどね。

 ですけども。

 

 

 やはり、昔の人はすごいんですね。

 

 

 

 いろいろ解剖してみたけれど、また元の姿にもどっていくんです。

 

 「暖簾に腕押し」がやっぱり、完成形だったんです。

 「暖簾に腕相撲」でもいいとは思うんですけどね。

 

 

 

 

 無理をして、ことわざを作るとしたらこうじゃないのかな。

 

 

 

 

 充電切れのiPhoneに、Hey!siri!

 

 

 

 どうですか。

 

 

 ・・・

 

 めちゃくちゃ使いずらいやないか!って意見はよしてください。

 

 いまのぼくに、何を言っても暖簾に腕押しですよ。

 

  

 

 

     【暖簾に腕押し】

 意味

 ・なんの張合いもなく、手ごたえがないことの例え

 

 

 

 

 

 

 

 

犬は、どんな棒に当たるの。【ことわ・ざ】

ことわざが好きです。

漢字で書くと、諺。

小学生の時から、国語の授業で習ってきたもので、教訓や風刺などをみじかい例えで表現された言葉。

 

 

「あいつの今回の件は、まさに、〇〇の〇〇だな」

というように、会話にも出てくるものが多くあります。

 

 

 

ことわざエッセイというのを、はじめてみようと思います。

正しいことわざの意味を整理してみる。

いまで言うなら、どんな表現ができるかを考えてみる。

そんなシリーズをやってみます。勉強になるかは分かりませんが。

なにかの、息抜きになれたら幸せです。

 

 

今日、扱うことわざはこちら。

 

 

 

 

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さてはて、ことわざの代表格のようなこの言葉。意味を知っている人はどれだけいるのでしょうか。良い意味で使うのだろうか、悪い意味で使うのだろうか。

 

どっちだと思いますか。辞典を調べました。ちゃんと調べました。

 

 

どういう場面で使うべきなのかは、犬が棒に当たる理由によるそうな。

ぼくは、犬が棒に当たる理由は、前方不注意だと思ってたんですね。

 

 

 

 

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飼い主と散歩中に、ご近所のアイドルであるメープルちゃんに見とれる。前にある電柱に気付かず、激突。みたいなことかなって。

 

 

だから、意味は、こうだと解釈していたんです。

 

『物事の成功・失敗は得意、不得意よりも、一時的な理由である』

 

なんてことなんじゃないのかなって。

 

 

 

違いました。ぜんぜん。違った。

おはずかしい。

調べてみたところ、棒に当たる理由はこうです。

 

 

「犬が外を歩いていたら、人に棒で叩かれる可能性がある」

 

 

人に棒で叩かれる可能性がある。あるんです0%とは言えないから、否定もできないのですなぁ。

 

でも、いまの世の中そんなことしたら、その人が叩かれますよね。恐らく、野犬がいた時代とかは人間と犬はもう少し、生物と生物の争いがあったからだと思います。

 

 

 

 

 

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ちょいと受け入れづらい理由ですよね。そもそも、棒ってなんだ。木の棒なのかな、鉄パイプかな。鉄パイプ持って歩いてる人なんて、見たことないな。

 

そういえば、男の人ってなんで木の棒が好きなんだろうな。気になるけど、気になるけど、これはまた今度にしとこ。そうしよう。ね。

 

 

 

話を戻すと、人に叩かれる恐れがあるという理由から、「犬も歩けば棒に当たる」には、

 

・でしゃばると思わぬ災難にあうことがある

という意味があるそうです。

 

 

からしたら、やってられませんよねぇ。ふざけんなよって。

 

 

 

 

ご安心ください。全国の愛犬家のみなさん。

そして愛されている犬のみなさん現在、もう1つの意味が、この言葉には追加されています。

 

 

・じっとしていないで、動いてみれば幸運に出会うことがある

という意味です。

 

 

“当たる”という表現が、ラッキーという印象を含んでいることから、このような良い意味が生まれたのです。

 

 

 

 

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かくして、言葉の中のわんちゃんは、棒に叩かれることが無くなったわけです。

 

 

 

 

木の棒、電柱、鉄パイプ・・・世の中には、もっとたくさんの棒があるけど、もしかしたら、棒っていうのはガリガリ君の当たり棒なのかもしれませんねぇ。

それだったら、すんなり理解できるなぁ。

 

 

 

ちなみに、歩きスマホををしていたら電柱にぶつかったよって人がいたら、それは悪い意味での“棒に当たる”だと思いますよ。

 

 

お気をつけて、楽しみましょう。

 

 

 

 

【犬も歩けば棒に当たる】

意味

・でしゃばると思わぬ災難にあうということの例え

・じっとしていないで、何でもやってみればラッキーに出くわすことの例え

 

 

 

 

なんでやねんの芽生え。

今週のお題特別編「はてなブログ フォトコンテスト 2016夏」

 

魔法の言葉をお教えします。

 

「なんでやねん」

 

どんな事象も、どんな苦しいことも、

「なんでやねん」と投げかける。

 

理不尽なんかで終わらせない。

 

理由を考えることが大切。

 

それを一番ストレートにできる言葉が、なんでやねん。

 

今年の夏は、花火大会に行きました。

 

そろそろ、日が沈む。


夕方の浜辺で、

なんでやねんが芽生えてました。



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理由は分からないけど、

いい男になりそうですね。


おっ。


「なんでやねん!」


 

 

 

釜めしが気になる話。

 

今日は、釜めしが気になる話を。

その前に、釜めしの気になる話を。

 

 

我が国、はじめての釜めしは駅弁だと言われているそう。

おぎのや「峠の釜めし」をご存知でしょうか。

 

 

 

 

 

55年前、会長が自ら駅に立ち、お客様の話を聞くことで、

あたたかい駅弁が食べたいというニーズに辿りつき生まれた駅弁。

今も、駅弁として人気の商品です。

 

 

ぼくたちが、電車であたたかい弁当を食べられるのは、

釜めしが生まれたからなのかもしれませぬ。

 

言いすぎでしょうか。

 

いや、あたたかい弁当を作り出すという製造方法は思いついても、

駅弁で出すというアイデアは、お客様の声を聞かないと出てこない。

ぼくたちは、どこにいても、

ぬくもりのある食べものを欲しているのです。

 

 

 

こんなに釜めしの歴史を語っていると、

会場の後ろの方から、

 

「米は、はじめから釜で炊いているじゃないか!」

 

という野次が飛んできそうである。

 

そんな野暮なことを言うもんじゃありません。

汗がたれるじゃないか。お静かに。

 

 

釜めしというのは、味が付いているのだ。

 

そして、釜に入ったまんま食べるのだ。

 

だから、時間がたっても温かいのだ。

 

蓋を開けたら、おいしそうな香りがぼくを包み込むのだ。

 

ふぅ。今日は、これぐらいにしておいてあげましょう。

 

 

釜めしが気になる話をします。

 

場所は居酒屋。

ここに、店員さんが持ってきた釜めしがあります。

 

「釜めしは、出来上がりにお時間かかりますがよろしいでしょうか」

 

なんて断りを言われてまで、注文した釜めし。

下の固形燃料が消えるまで、おあずけをくらうのです。

なかなか消えない火。

 

周りにおいしそうな料理が並んでいても、気になって仕方ない。

開けてみたい。ちょっとだけ中をのぞいてみたい。

 

『あけたら台無し』

 

だいたい、みんなが分かっていること。

だから、机の上の釜めしは存在しないかのように扱われる。

 

 

そして、火が消えたとき、

「あっ、いつのまにか火が消えてる!」

なんて、とぼけたことを言いはじめるヤツが出る。

 

 

 

 

 

釜めしって、ちょっとだけ、野次馬と似ていると思うんです。

外を歩いていると、近くでパトカーの音がする。

そして、救急車の音もする。

 

どこで鳴っているのか気になる。理由は何だろう。

事件なのだろうか、それとも事故か。

誰かの不幸には違いないので、あまり野次馬はしたくない。

それでも、不思議。足は、音のほうへ向かってしまうのです。

 

 

 

それに比べて、釜めしは存分に気にしてもらっていいのです。

なんだったら、開けてくれても別に大丈夫。

ちょっとだけ、周りからブーイングが出るけど、それも楽しい。

野次馬にジレンマを感じる人は、釜めしで解消してください。

 

見たいけど、見たくない。だけど、見ちゃう。

これが、野次馬と釜めしの関係性であるのです。

人の不幸がないほうを、楽しみましょう。

 

 

 

さて、居酒屋に戻ります。

 

待望の出来上がりのくせに、みんな気にしてなかったような素振り。

 

 

 

そして、蓋の取り合いがはじまる。

なぜなら、釜めしには香りが閉じ込められているからです。

蓋をあける瞬間こそ、最大の極楽なのです。

 

 

 

ちょうど、鼻の位置に立ち込める香り。

しょうゆのような、鶏肉のような、きのこのような、ふんわりとした香り。

この瞬間のために、長い時間待っていたのだ。

おこげの存在を嗅覚で感じるこの瞬間を。

 

 

 

 

 

おなかがいっぱいのはずが、また空腹が訪れる。

ふしぎな現象だ。でも、茶碗を持って構えてしまう。

 

 

ここで、また論じるべきなのは、

釜めしを茶碗に盛るときの人々についてなのですが。

 

書いてるぼくも、おなかが空いてきたので今日はこれまで!

 

 

おーBON!


明日からお盆休みになりました。


嬉しい。嬉しい。


この喜びをどう表現しようか。





家中のお盆を集めよう。


開けてまわる。

上の棚、下の棚。

引き出す棚。



汗かいて探し回って、

出てきたのは一枚だけ。


さて、散らかった。

というか、散らかした。



目の前に広がったのは、

大量の蓋のないタッパー。



覆水盆に返らず。盆も棚に返らず。



あぁ、言ってしまった。

言ってしまったよ。



あしたの予定は、

片づけから始めよう。




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銀行員に潜入。8マス目



今日は、山の日。

しっかり仕事にはいきません。

休みの日は、しっかり休みます。

その代わり、銀行員は年末30日まで仕事です。


世間が、1年のクライマックスへ向かう中で、自転車乗って走り回ります。

そう考えたら、ピザの宅配をされてる方とかは凄いなぁって思います。




誰ひとり働かない日はない。


なんてね。



さてはて、お客様の家を訪問すると、

いろんな食べ物や飲み物をいただきます。


かならず、ホットコーヒーを出される人。

かならず、みたらし団子を出される人。

かならず、きな粉たっぷりわらび餅を出される人。


ぜんぶ同じお客様なのですが。


夏に、ホットコーヒー。

これは、なかなかにきびしい。

汗をしたたらせながら、ホットコーヒー。

これは、ほんとにきびしい。


それでも、話を聞いてもらえるだけありがたいので、毎度、完飲完食です。







いつも、暑い。

つまり、いつも汗だく。

お客様に心配されるぐらい。


「大丈夫です。汗かきなので。へへへ」

って、おどけるのですが倒れる寸前。


ある日の帰り際に、


「これを持っていきなさい」


と渡された小さな箱。

開けたらハンカチが一枚。

使ってなかったどこかで貰った粗品だそう。


たしかに、ポカリもお手上げの水分を、全身から出してるからなぁ。

ありがたやぁ。



「ハンカチ持って行きなさい」


久しぶりに言われたなぁ。


(ちゃんと、いつも持ち歩いてます)








また、別の日。


裁縫が趣味のお客様の家へ。

細かい作業がすごく楽しい様子。

90歳を過ぎてもすごくすごく元気。


今も、絵の教室に通っているそう。


趣味を楽しむこと、人と会うこと。

これがいちばんの健康法なのだろう。


作った作品をたくさん見せられる。

いや、見せてもらう。

うん、見せてもらう。



ご主人との出会いから、

ひ孫が産まれるまでの人生。

3周ほど、お聞きしました。



さすがに、帰らないといけない。

お礼を告げて、席を立つ。



「これを持っていきなさい」

って、渡されました。


お客様が、

趣味の裁縫で作ったティッシュケース。

余った布を利用したようで、

これがなかなかお洒落でいい。


印鑑を汚さないように、

ポケットティッシュは必需品。

ありがたい。



ティッシュ持っていきなさい」


久しぶりに言われたなぁ。





いつぶりだろう。

きっと、小学校の遠足ぶりだろうなぁ。




24歳、銀行員。

ハンカチとティッシュを鞄にいれて、

明日も外を走ります。





つづく。





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今日は、家でドラマを観てます。



あぁ。


オリンピックは、

いちばん面白いドラマだと思う。


ワイドショーで選手のドラマを知るのは、

なんかちょっと違うと思うから、

ちゃんと調べるようにしてます。


おすすめです。




オリンピックにちいさな楽しみ。


リオ・オリンピックがはじまりました。

4年に1度(冬も入れたら2年だけど)の世界大会を、

ぼくはとても楽しみにしています。

 


体操団体で金メダルに期待。

いろんな競技で、日本の新星が活躍がみたい。

錦織圭のプレーに熱狂したい。

 


ただ、それだけじゃつまらない。

スポーツニュースを見るだけで終わってしまう。

ぼくみたいな、休みは家に引きこもってきた人間にとって、

多種多彩な競技がテレビで観られる日々がたのしくてしかたない。

明日の月曜日も、本当は家でオリンピックが観たい。

仕事をしたくない気持ちも半分ぐらいはあるけど。半分ぐらいね。

そんな、気持ちに日曜日の朝からなっているのです。

 

 

てなわけで、オリンピックに家でお相手をしてもらってきたぼくの、

周りより一歩進んだ楽しみかたを紹介しようじゃないかと思う。

ちなみに、ぼくは24歳。

まだ、12回しかオリンピックは行われていないので、

優しい目で読んでください。お願いしますね。

 

 

 

まず、開会式が面白い。(なんだよ、終わってるじゃんってね)

その国の文化を、ここまで全力で見せつけられるのは、

おそらく万国博覧会と、オリンピックの開会式だけだと思う。

なんだったら、万博なんて比じゃない。

音楽、映像、人物、開催国の持っている力すべてがここに注がれている。

 

だけど、開会式の楽しみは、それだけじゃない(なかったんです)。

 

選手入場がある。200か国ぐらいの代表選手が入場してくるのですが、そこが楽しい。

 

あの、美しいブロンドの女性は、なんの競技に出るんだろうって、

“ 国名 オリンピック 美人 ”で検索したりしたら、

おなじような男性がたくさんいたりして、すぐに見つかったりする。

その女性が、射撃の選手とかだったら、もう心を射抜かれたりするわけです。

 

 

そして、はしゃいでる選手を見てるのが、すごく楽しい。

カメラや、スマホを片手に入場してくる選手がたくさんいるんです。

 

世界大会の開会式ですよ?

学校の運動会で、開会式でスマホ持ってたら怒られますよ?

 

いいんです。それがいいんです。許されるのです。

国の代表になるまでに、この開会式に辿りつくまでに、どれだけの努力をしてきたか。

 

怪我に泣き、

娯楽を我慢し、

練習に苦しみ、

家族に助けられ、

プレッシャーと戦う。

 

そう思うと、目の前に広がっている景色を、全力で楽しんでほしい。

心から思えるのです。

 


ぼくたちは、どこか代表選手には品を求めてしまう傾向にありますが、

じぶんがオリンピックに出られたら、きっとはしゃいでしまうと思います。

そういう人間味を、存分に味わえるのが開会式なのだと思うのです。

 

 

「なぁんだ、代表選手も、自分たちとあんまり変わらないじゃない」

 

「世界の人たちも、共通で楽しいものを持っているじゃない」

 

 

 

美人アスリートの、競技中じゃない笑顔の姿は最高です。

スーパースターが、スマホで自撮をしてる姿も最高です。

 

そして、楽しいものに素直に笑顔になっている選手を見て、

自分たちとなにも変わらない、

普通の人たちが全力で戦うところを応援したくなるんです。

 

 

 

 

 

そんなに語られたって、開会式は終わってしまったって?

 

まぁまぁ、奥さん。

これからちょっとずつオリンピックの楽しみかたを教えていきます故に。

お許しください。ひろい心で。



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つづく。

 

 

銀行員に潜入。7マス目


久しぶりに、銀行員に潜入。

と言いながら、毎日しっかり働いているのですが。


今日は、“男”って話を。




銀行員のカバンは、とても重いです。

特に、ぼくの鞄は格別。


なにを、そんなに入れてるのか?って、

聞かれてないけど教えます。


タブレット(お客様の情報を見るため)

・持ち運びプリンター(手書きでいいだろ)

・業務用ケータイ(電池が全然もたない)

・電卓やら小物(たまに忘れる)

・伝票関係(何枚あるんだってぐらいの種類)

・チラシ(ロビーに捨てられてたら悲しい)

投資信託のパンフレット(いちばん重い)

・汗ふきタオル(これだけは忘れない)


ざっと、こんなかんじ。


ぼくは営業に出てすぐ、

営業カバンの重さで、見事に背筋を痛めました。




軽い気持ちで、カバンを持ってはいけません。


あっ、なんだかややこしい。ごめんなさい。



そんなカバンを抱えまして、自転車にまたがってお客様の家を訪問するわけであります。

(この自転車について、衝撃の事実がわかったのですが、それは8マス目で)



いつものお客様の家へ。

すこしだけ、腰の曲がった独り暮らしのおじいさん。

夏場だし、

熱中症を気をつけてくださいね」ってのを伝えたり、他の話をしたり。



普段は、1人で周っているのですが、

その日はサポートで先輩と一緒に訪問しました。

明るくてきれいな女性の先輩。


ちなみに、ぼくは、

陰気で汗だくの営業です。

かなしいかな。



いつもよりテンションの高い、

78歳のおじいさん。


あれっ、よく見れば、腰もすこし伸びてるぞ。たぶん。


大きな声で話をしている。

ぼくも話に参加する。



楽しい時間(誰にとってか)は、

あっという間で帰ることに。


そしたら、おもむろにお客様が一言。


「いっかい、そのカバンを持ち上げてみるわ!」


えっ。

うーん。5キロ以上はあるぞ。


もし、お怪我なんかされた日にゃ、

ぼくは何と言って上司に怒られたらいいんだろう。


『実は、お客様に営業カバンを持たせたら腰を痛められまして…』


なんで持たせるねん!って怒鳴り声が聞こえてきそうです。



なぜ、こんな事態になったか。

理由はひとつ。

「きれいな女性に、いいとこ見せたい」だろう。



結果はこう。


・ぼくが殿様に刀を差し出すかのように、カバンの底を支える。

・先輩が「すごい」って言う。

・お客様が満足して、カバンを離す。

・ぼくの指が悲鳴をあげる。




いいんだ。いいんだ。

怪我なく終わってよかった。よかった。

ぼくの指がなんだっていうんだ。


そんなことよりも、

気づけたことがあったから良かったのだ。




いくつになっても

男は女にいいところを見せたい生き物




なんというか、

人間味があって、すごく嬉しい気持ちになれた。


おじいさんになっても、関係ない。


何歳になっても、

どんな状況でも、

【かっこつける】ことを忘れたらダメだ。



自分の祖父が、

最期の瞬間に見せた、心の強さを思い出した。

ぼくが家に帰ってくるまで、必死に生きて、会えた瞬間に息を引きとったあの日を。


あれは、【かっこつける】ためだったと勝手に思ってる。

在宅介護をしてるぼくに、

弱い姿を見せるのを悔しがってたから。



うん。


しみったれた話になってしまった。


本当は、男は何歳になっても【スケベ】ってことを書こうと思ってたのに。

エロパワーは消えないってことを、

伝えようと思ってたのに。



夕方は、すこし涼しい。

海の風が、ここまで吹いてくる。


「あのお客さんは、まだまだ元気だろう」


そう思いながら、きれいな女性の先輩と、

いつもの支店へ帰ったのである。

帰り道、ぼくのテンションはいつもより高い。


なぜって?



あぁ、きれいだなぁ。


空。




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つづく。