得も損もない言葉たち。

日常を休まず進め。

あなたのクスッとをください。

カローラにのって、どこまでも生きたい。

 

 

カローラⅡにのって

買いものに出かけたら

サイフないのに気づいて

そのままドライブ

 

 

 

youtu.be

 

 

トヨタカローラⅡのCMに使われた曲です。

小沢健二さんが歌っていて、軽やかでのどかな雰囲気が伝わってきて。

なんというか、乗ってる時間がすべて日曜日になるような気がしてきます。

こんな、のどかな生活をおくれるなら、車に乗ってもいいなぁ。

できたらカローラに乗りたいなぁ。

そんな気分になりながら、今日も家に引きこもっているのですが。

 

 

 

ぼくは、一応、免許は持っているのですが。

最後に乗ったのが卒業試験の教習車で。

もっぱら助手席が指定席になってる、

典型的なペーパードライバーなんです。

仕事で、車にのったり、原付にのったりしないのかと言われたら、

なんでかそういう縁もなく、

2分で充電の切れる電動自転車にのって仕事をしています。

 

 

電動自転車のって

営業にでかけたら

電池ないのにきづいて

そのまま失速

 

 

というような日常が、ぼくの『電動自転車にのって』の歌詞です。

 

車にもあんまり興味が無くて。

周りがどんな車を買おうか悩んでいるときに、

ドラえもんの原画を買うかどうか、

和田誠さんの画集を取り寄せるかどうか、

真剣になやんでいたりするので。

これからも免許証は身分証明書の域を、なかなか脱出できないのですが。

 

 

一枚のカローラ

 

 

先日、写真のフォルダをなんとなく振り返っていたら、

一枚の車の写真が出てきました。

どうしてぼくが、その車がカローラだと分かったかと言うと、

その車に休日はいつも乗っていたからです。

 

 

おじいちゃんっこだったので、休日はほとんど祖父の家へ。

友達とそんなに遊んだりもせずに、基本的に祖父の運転でどこかへ行ってました。

野球を観に行ったり、いとこの家へ行ったり、近くのゲームセンターへ行ったり、

そんなことを高校1年生まで続けているような、だめな孫だったのですが。

 

 

祖父は、タクシーの運転手をしていたので、

仕事をやめて、今度は孫の運転手をやってることをどう感じていただろなぁ。

でも、いっしょに遊んでる感じはすごいあったんですよ。

 

 

カローラの中では、いつも、カセットテープから昭和の名曲が流れてきてました。

クレイジーキャッツとかも、そこで知ったんですよね。

小林旭自動車ショー歌とか、小学校で歌えてましたし。

阪神タイガースの試合や、大相撲の千秋楽があった時は、

中継が流れてたりもしたんですが。

雑談しながら車を運転するのは、祖父にとっては当たり前だったので、

そこでいろんな話を聞いたりしながら。

 

 

たぶんなんだけど、

ぼくはゲーセンに行く楽しみ、

祖父にはドライブをする楽しみ、

その両方をカローラに乗せていたんだと思うんです。

 

 

ぼくは左のほほに、そばかすみたいなシミがあって。

母親が言うには、助手席にずっと座ってたからだそうで。

たしかに右のほほには無いんです。

ずっと、左からさしこむ太陽光を浴びたからなんちゃうかなぁ。

 

 

 

後ろの席は移動ベッド

 

 

後ろの席には、枕とたくさんの漫画が積んでありました。

水泳をやっていたときに、祖父はたまに迎えに来てくれてたので、

疲れはてたぼくにとって、カローラは移動ベッドでした。

枕をおいて、寝転がって漫画を読む。

BGMは昭和歌謡で、

いつのまにか眠っていて、気づいたら家についている。

 

 

「着きましたで」

 

と祖父は、メーターのついていないカローラを止めてぼくに言うんです。

もちろん、タダ乗りですよね。

で、家に泊まって、また次の日どこかへ出かけてました。

 

 

 

 

動かなくなったカローラ

 

 

祖父は、病気になって、車の運転をやめました。

そうですよね、危ないですから。

ぼくも電車に乗ってどこかへ行くことが増えて、

休日は祖父の家にいるんですけど、

一緒にどこかへ行かなくなって、

お土産を買ってくるような生活でした。

 

 

でも会話は、やっぱり、カローラに乗っていた頃と変わらなくて。

相撲中継になればテレビをつけるし、

高校野球は、試合が終われば球児がかわいそうなので電源を切りました。

 

音楽は、いまもクレイジーキャッツが大好きだし、

自動車ショー歌はカラオケで歌います。

 

 

で、そうだ。思い出したんです。

 

 

 

写真フォルダから出てきた、

さして車に興味のないぼくが撮ったカローラは、

別れの日の姿だったんです。

 

 

祖父が病気になった高校2年から、

つかれて眠ってしまった大学2年生の冬の夜まで。

もうかなりの距離を走ったカローラは、

役目を終えてずっと車庫で休憩していたんです。

 

 

ぼくは、そのカローラに乗りたいなぁと思っていたんですが、

どうやらもう一度いろんなところに連れて行ってもらうには、

難しい状態だったみたいで。

維持費を考えた結果、「おつかれさま」を言う必要があると、

父親が判断しました。

 

 

 

おつかれさん

 

 

 

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この写真は、廃車になるカローラの最後の出発を撮ったんです。

画質は、ごめんなさい。当時の携帯の限界です。

 

 

 

夜に、父親の知り合いの業者の人が来て。

長い間ねむっていたカローラを何とか動かして。

ルームランプをつけてもらって、

ぼくはちょっと遠いところでシャッターをきりました。

「おつかれさん」を言いました。

 

 

片づけをしていると、

いつも使っていた枕と、

こち亀の単行本が5冊も出てきました。

そして、大量のカセットテープも。

ぜんぶ、祖父の字で曲名が書かれていました。

 

 

 

 

カローラと別れてから5年ぐらいになります。

たまたま、写真の中で再開して、

いろんなことを思い出してました。

 

 

 

カローラの中は、高校生のぼくにはちょっとせまかったけど、

でもいろんなものに触れることができたと思います。

音楽、スポーツ、祖父の話、漫画。

で、連れて行ってもらったたくさんの場所。

 

一枚のブレた写真は、大切にしようと思いました。

 

 

 

 

 

最初の歌には、こんな歌詞があります。

 

 

カローラⅡにのって

どこまでも行きたいな

ずっとずっと

どこまでも

道はつづくよ

 

 

 

ぼくが、カラオケで自動車ショー歌をうたって、

こち亀を読んで、大相撲中継をみて、

高校野球は試合が終わったらテレビを消して、

映画は『大脱走』を好んで、

クレイジーキャッツに影響をうけた星野源を聴いて、

まいにちをそれなりに生きていることは、

カローラにのった毎日が、

いまも続いているからなんちゃうかなぁと、

 

そう思っているんです。

 

 

 

祖父はヘビースモーカーでした。

ぼくはたばこを吸いません。

祖父は車の運転が上手でした。

ぼくはペーパードライバーです。

 

運転席と、助手席。

その関係性は、しばらくは変わりそうもないのです。

 

 

 

これからも、

カローラにのって、どこまでも生きたいです。