得も損もない言葉たち。

日常をひとます、休まず。

あなたのクスッとをください。

牛乳石鹸ぐらい、おおきなきんつば。

 

自転車にのって、プラプラと「赤いスイートピー」をうたっている。

坂道をのぼるときには、松田聖子さんに申し訳ないような、

赤いスイートピーになる。

 

 

あぃうぃ~る ふぉろ~ゆぅ~~ うぅ~~~

登りきるまでのうめき声は、

心の岸辺にというより、岸壁といったところである。

 

 

のぼるときは立ちこぎ。

足をついたら負けという自分ルールを勝手に制定してしまったので、

仕方なく自分と遊んでいるのです。

 

 

帰り道は、ヘロヘロと「世界中の誰よりきっと」を歌っている。

もちろん、気分はWANDSではなく中山美穂

いちばん好きなところは、

まぁ~たぁ めぐりあえ~たの~は~ である。

何回めぐりあうのか、それはぼくのさじ加減で、

一日に何度もめぐりあわせを生んでしまっています。

 

 

そんなかんじで、小雨の中、かっぱを着ながらの帰り道。

ぼくのソロコンサートをさえぎるように、おばあさんの会話が飛び込んできた。

 


 

「うわぁ、こんなんボートに乗ってこないとあかんわ」

 

「そうですねぇ~、うき輪も持ってきてくださいね」

 

 

なんの会話だろうか、声のしたほうを振り向く。

整骨院の玄関の前に、とても大きな水たまりができている。

そこを、おばあちゃんがまたごうとしている。


水たまりの大きさを、ボートが必要なぐらいであると表現したみたいだ。

たぶん、「でっかい水たまりやなぁ」だったら振り向いていないと思う。

また、洪水レベルの雨だったとしても、振り向いていないと思う。

 


ボートで来ないといけない。

 


おばちゃんのボケにたいして、

おねえさんのかえしも素早い。

 


うき輪を持ってきてください。

 

 

営業にでて最初に恥ずかしかったのが、

お客様のフリに、反射的に言葉をかえすこと。

何も考えてないように思われたくなかった。


ああ言えば、こう言うというやり取りをしていると、

どんな人に対しても同じように接していると思われるんじゃないかと、

考えてしまった。というか、いまも思っている。

 

 

どこかで、おっ、こいつはちょっと違うなって思われたい。

とくに、銀行員は転勤が多いので、

今回の担当者はちょっと面白いぞって思ってほしい。

だけど、現実はそう上手くはいかない。

何人におなじ話をしても、

全員からおなじ反応がほしい人だっている。

絶妙な空気感で、やりとりを楽しむ必要がある。

 

 

たとえば、ぼくの場合は、

「ボートに乗ってこないといけない」

ってお客さんに言われたらどう答えていただろうか。

 


うき輪なんて言葉を出せていただろうか。

 


明日も雨がふるのかどうか とか、

小学校の時に長靴をはいて飛び込んでいた という話をするだろうなぁ。


でも、お客さんはそんな話をもとめていない時もある。

 

「次は、うき輪をもってきてくださいね」

 

いろいろ考えたら、こうかえすのが一番なのかもしれない。

でも、それじゃあなんだか、味気が無いような気もするんです。

 

どうでしょう。

ノリツッコミにすらなっていないので、

お客さんのボケをほうったらかしにしている気がしませんか。

かと言って、「って何を言ってますねん!」ってツッコむのも違う。

 

 

 

ちょうどいい答えは何か。

お客さんのボケをほうったらかしにせず、

お話をしっかりとできる答え。

 

 

帰りの電車でずーっと考えていたんです。

 

 

最後にぼくが辿りついたかえしを。

 

 

 

「ふふふ。そういえば、北海道の摩周湖って、

 湖じゃなくてでっかい水たまりなんですって」

 

 

うん。これぐらいが、ちょうどいい。

どうでもいいことだけど、

お客さんのお話をしっかり聞いてそのうえで、

ちょっとだけ面白い話を引きずり出してみる。

めっちゃ難しいのだけど。

 

 

たくさんのことを考えて、営業をしているけど、

やっぱりいちばん力をいれるべきところは、

お客さんとのやりとりを、いかに楽しくしてみるかなんだと思う。

 

 

本当に楽しんでもらえているかは分からないけど、

今日は牛乳石鹸ぐらい大きなきんつばを2つももらったから、

今のところは、できていると思っておこう。

 

 

 

花粉症のお客さんから、

「鼻とって歩きたいわぁ~」

って言われたらどうしたらいんだろうか。

 

どうしようか。

 

 

とりあえず、ふふふと笑って、

出されたきんつばを口にほおばるしかない。