得も損もない言葉たち。

日常を休まず進め。

あなたのクスッとをください。

銀行員に潜入。10マス目

 

 お久しぶりです。

 営業の上期の末のドタバタの何かにやられてしまい、

 先週末は泥のような毎日を送っていました。

 

 

 仕事から帰ってきたら、宣伝会議賞のコピーを考えて、

 書いたり、考えたりして、座椅子でそのまま寝てしまったり。

 その影響か何か知りませんが、朝に謎の頭痛がつづいたり。

 

 

 でも、こうやって机に向かっている時間は、

 なによりも、自分がやりたいことをやっているので、

 満足しているのです。

 

 

 もちろん、銀行員もつづいています。

 

 

 そんなこんなで、今月に入って、

 すこしだけ落ち着きながら自転車をこいでいる毎日です。

 

 

 

 お客様は、ほとんどが人生の先輩。

 というか、大先輩です。

 ぼくよりも70歳ほど年上の方でも、大変お元気。

 一度話し出すと、とまりません。

 

 でも、ぼくもぼくで、それが楽しいのです。

 

 なぜなら、そこで得られる話は、ぼくの24年の人生では、

 絶対に経験できない話だからです。

 

 

 たとえば、

 阪神淡路大震災のリアルな話。

 戦時中の生活の話。

 皇居に勤めていたご家族の話。

 人生でドンの底から這いあがった話。

 

 

 

 本を読むことも大好きですが、

 そうやって、たくさんの人のすべらない話を聞けるのは、

 この仕事のいいところ。

 

 

 

 ただ。

 

 ただですね。

 

 

 あまりに鉄板の話があると、

 お客様はもう来るたびに、その話をされるんですね。

 

 もはや、ぼくもその話の細部まで話せるようになるほど。

 それも、まぁ大長編なので1時間弱ぐらいはあるのです。

 

 

 

 落語のように、きれいに物語は進みます。

 さしづめ、ぼくの営業トークは枕のようなものです。

 

 

 ・ご資産の形成の話 (ぼく)

  ↓

 ・ご家族の話    (お客様)

 

 

 になるので、ごく自然に流れていきます。

 気づけば、ぼくがお客様になっているのです。

 話を聞きながら、出された団子を頬張る。

 今日も、今日とて、収穫は糖分のみでした。

 それは、それでいいのですけど。ほんと。ね。

 

 

 

 ただ、たまに、ぼくも時間に追われているときもあるのです。

 たまにじゃダメなのでしょうが。

 

 

 そんなときに、お客様に気付かれず、

 現在の時刻を確認する手段を、たくさん身に付けてきました

 

 たとえば、

 カバンを見るフリして、時計を見たりするような技術です。

 

 

 

 今回、実践した方法は、

 

 『テレビ番組の進行具合から、時刻を読み取る』 です。

 

 

 

 行程は2つ。

 ・お客様の自宅で、つけっぱなしになっているテレビを最初に見ておく

 ・入った時間だけは、確認しておく

 それだけしておけば大丈夫。

 

 

  

 

 具体的なお話をしますと、

 お客様の自宅に入った時刻が13時過ぎ。

 

 テレビがついている。

 

 よくやっているような、温泉殺人事件。

 シリーズ物なので、恐らく、1時間のドラマだろう。

 

 営業をはじめて、10分。

 温泉街で人が殺される。

 そこで、ぼくの営業トークも終わる。

 

 

 ここからは、お客様のお話。

 

 

 後ろのテレビでは、たまたま泊まりに来ていた刑事が、

 事件を解決するために奮闘している。

 

 『恐らくまだ、13時半ぐらいだ』

 

 

 

 そこから、過去のお仕事の話を聞いていると、

 興味津々になる話題が出てきたので、

 ぼくも時間を忘れて、長話をしてしまう。

 

 

 

 大丈夫、まだテレビのドラマは解決していない。

 

 

 

 

 たまに、お客様のうしろにあるテレビに目をやり、時間を確認。

 とうとう、犯人が嘆きながら、殺人の動機を語っている。

 きっと、そろそろ13時50分だな。

 

 

 

 「そろそろ失礼いたします」

 話を切り上げて、お客様の家をあとにする。

 

 

 

 腕に付けた時計を眺めた。

 

 

 ・・・

 

 

 

 

 時計の針がさしていたのは、14時45分だった。

 

 

 

  ・・・

 

 

 

 

 2時間ドラマだった。

 

 

 




 

 

 銀行員は、つづく。