得も損もない言葉たち。

日常をひとます、休まず。

あなたのクスッとをください。

前夜が好きだ。

 

前夜が好きだ。

何かが起こる、前の日の夜。

 

布団の中で、ああでもない、こうでもないと色んなことを考える時間。明日になったら、もうこの時間は帰ってこない。

 

 

ドラえもんの劇場版には、「前夜」が頻繁に描かれる。

 

 

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藤本先生は意図的に(たぶん)、前夜をはさむようにしている。敵と出会って、そのまま戦いに移るのではなく、「明日の朝が決戦だ!」という流れがあって、夜がやってくる。

 

 

映画を観ていても、コミックスを読んでいても、この前夜が訪れるシーンにぼくはワクワクしてしまう。ドラえもんが出した、何かしらのシェルターにみんなが泊る。明日は大変だぞって言いながら、みんなでその恐怖を乗り越えようと、明るくふるまう。好きなものをたべ、しずちゃんはシャワーを浴びる。のび太は、旅先で出会った仲間と、一緒に空を見上げる。

 

 

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それぞれが、色んな思いを抱えて、明日になるまでの時間を過ごす。その前夜は、今しかない、答えも出ない夜になる。

 

 

 

 

・前夜は、決心の時間。

 

 

約三年前の3月31日、ぼくはまぎれもなく前夜を迎えていた。明日からは、社会人になる。どうしても逃げられない朝がやってくる。人生という、とてもながい戦いを前にして、祖父の家の二階の窓から、路上に咲いている桜を眺めたことをすごく覚えている。

 

こわい、こわくて仕方ない。明日からは、お金に困ることはないだろう。でも、その分、厳しい社会が待っている。そう思うと、眠るにも眠れず、24時をすぎるまでは大学生である自分を、どうしても大切にしたくて、布団を飛び出した。

 

 

 

 

 どんな人生になるのだろう。

 そもそも、銀行員になんてなりたくなかった。

 あぁ、ここから地獄の毎日だろうなぁ。

 でも、グダグダ言ってても時間はすぎるし、

 とりあえず何とかやってみるしかないなぁ。

 陰気臭いのは嫌われるから、挨拶はちゃんとしよう。

 

 

そんなことを考えていたら、ただただ時間が過ぎる。でも心を決めないと、眠れないような気もする。眠れないと、明日からはいつもより2時間も早く起きないといけないから、自分が苦しくなる。「寝坊してもうた・・・・まぁえっか」は許されない。

 

 

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そんなことをぐるぐる考えていたときに、行きついたのが二階から桜を眺めることでした。もう充分に悩んだじゃないか。これ以上、いまの時間を怖がっていても仕方ない、そうだ、ぼーっとしよう。そう思ったことを覚えています。

 

気づけば、布団に入っていて、朝がきて、ぼくは社会人になっていました。

 

 

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いま振り返ると、社会人前夜というあの時間は、とてつもなく大切な瞬間だったと思います。

 

勇気や決意といった、避けて通ってきたものと、真っ向から対峙する。でも、結局、どうすることもできずに何とか逃げる場所を探して、外を眺める。

こうやって、ここからの人生は進んでいかないといけないんだと、気づかされた瞬間でした。それはもしかしたら、逃げてるわけじゃなくて、戦ってるってことなのかもしれない。

 

睡眠不足で、そのまんま眠ってしまっていたら、味わうことのできなかった葛藤。藤本先生が描く、のび太たちとおなじように、ぼくも前夜を過ごしていたのです。

 

 

みなさんは、どうでしょう。どんな前夜を過ごしたことがありますか。

 

 

 

 

・前夜は、ひとりじゃない。

 

のび太結婚前夜という素晴らしいエピソードをご存知ですか。のび太ドラえもんが、将来しずちゃんと結婚する未来を確かめに行くのですが、結婚式の前夜に行われるやりとりを描いた名作です。

 

その中で、しずちゃんがお父さんに結婚を辞めると切り出すシーンがあります。私が出ていくことで、いままでたくさん愛してくれたパパとママを寂しい思いにさせてしまうことが嫌だと告白するんです。

 

そこでお父さんは、こう返します。

 

 

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有名な1ページですよね。この話をみて、涙ぐまないお父さんはいないのじゃないのかと、個人的には思ってしまうぐらい、美しい。いつか、じぶんが父になったときに、娘の結婚前夜はどんな気持ちになるのか。こんな感情になれたらいいなぁと、そう思います。

 

 

ひとりにとって、とても重大な前夜は、じぶんに関わってくれた人たちにとっても、特別な前夜なんです。明日、社会人になる自分に、両親はどんな感情を抱いていたのか。それは、まぎれもなく特別な夜。

4月1日も、変わらずに仕事へいく未来が待っていても、息子の人生に自分たちが関わってきたからこそ、やってくる前夜。

 

 

 

妹がこの春、社会人になると聞いて、あの時のぼくみたいな前夜を過ごすのかなぁと思ったら、ちょっとだけ感傷的になります。

でも、自分からは何も言葉はかけません。しずちゃんが結婚する前夜、ひとりで時間をすごしていたパパのように、ぼくはボーっとしていると思います。でも、そこにはちょっと感慨深いものはある。

 

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今日も、きっと誰かの前夜が訪れて、それにかかわるたくさんの人たちが、おなじようにいろんなことを考えて、空を見上げている。それは、藤本先生がドラえもんのなかでたびたび描いていた前夜と似ていると、ぼくはそう思うんです。

 

 

 

 

もうすぐ、春がやってきます。新しいスタートを切る人がいっぱいいます。

今日、大切な前夜を過ごしている。そんな人たちがたくさんいると思うと、ぼくには何も待っていなくても、この夜がすごく好きになってしまう。

 

 

 

 

前夜は、きっと、ひとりきりじゃない。

 

 

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ひとりで布団に入るけど、何人ものじぶんの味方が一緒の夜を過ごしていること。

それがちょっとした勇気をくれるはず。だからこそ、悩みすぎず、好きなカツ丼をたべたり、シャワーを浴びたり、歌をうたったりしなくちゃ。

 

特別な夜だけど、特別にしようと思わなくたっていい。振り返ると、その夜は、かけがえのない決心の前夜になっているはず。

 

そう思っています。

 

だから、前夜が好きなんです。