得も損もない言葉たち。

日常をひとます、休まず。

あなたのクスッとをください。

ぼくのなりたいおやじ

 

ぼくのなりたいおやじ

 

 

 

「カルピス買ってきて」と頼まれて、スーパーに行って、

原液とミネラルウォーターを買って帰ったら、

「水道水でええんやで!」と娘に説教されるようなおやじに、

ぼくはなりたい。

 

 

 

子どもにはエジソンの伝記とかを勧めときながら、

その隣で少年ジャンプを読んでいたい。

「パパだけ漫画を読んでるなんてずるい」と言われたら、

「努力・友情・勝利、お前はこれからたくさん学べるよ」と、

遠い目をして語れるようなおやじに、

ぼくはなりたい。

 

 

 

「パパは今日は疲れてるんじゃないの、インフルエンザなの!」

と奥さんが娘に言ってさ、予防接種を受けることの大切さを、

身をもって教えるような悲しいおやじに、

ぼくはなりたい。

 

 

 

公園でのほほんとしていると、

「パパってスズメに囲まれているのが似合うね」と、

平日の自分の姿を娘に言い当てられ泣きそうになるが、

それでも苦しみに立ち向かうようなおやじに、

ぼくはなりたい。

 

 

 

家で新聞を読むときは、

経済面よりも社会面よりも、テレビ欄に釘づけになって、

金曜ロードショーカリオストロの城にピンクのマーカーをひいて、

食卓の上に置いておくようなおやじに、

ぼくはなりたい。

 

 

 

昔にちょっと音楽をかじってたと嘘をついてしまって、

ある日子どもが、サンタクロースにギターを頼もうとしていることを聞き、

11月からヤマハの音楽レッスンで基礎を学び、

プレゼント代よりお金をかけてしまうようなおやじに、

ぼくはなりたい。

 

 

 

夏休みの宿題をしている子どもの隣で、

人生の教訓じみた言葉をいっしょになって書いていると、

調子に乗ってカーペットを汚してしまい、

そっと、娘のせいにして散歩に行くようなおやじに、ぼくはなりたい。

あとで、ちゃんと謝れるようなおやじに、

ぼくはなりたい。

 

 

 

寝る前に本を読んでほしいと言われて、

大好きな本を黙読してしまうようなおやじに、

ぼくはなりたい。

 

怒られて、今度はシンデレラを読んでほしいと言われて、

登場人物をぜんぶ関西弁にしてしまうようなおやじに、

ぼくはなりたい。

 

 

 

水族館に行って生きものをかわいいなぁと眺めている娘に、

この中でいちばん美味しい魚はどれかを教えて、

罰として帰りに回転ずしに連れて行かされるようなおやじに、

ぼくはなりたい。

 

 

 

でも、どうしよう。

 

こんなに、なりたいおやじがいっぱいなのに、

結婚願望がぼくにはない。

 

うだつの上がらない中年おやじには、ぼくはなりたくない。