得も損もない言葉たち。

日常を休まず進め。

あなたのクスッとをください。

美味しい匂いがする家を探せ 銀行員に潜入中

 


お昼はもっぱら、コンビニで買ったパンをちぎって、

ちかよってくるスズメにあげながら、

一言も発さず無言で食事をしています。

 


仕事をしている時に、仕事の話をするのが嫌いで、

支店の中で食べることも、会社の人と食べることもしないで、

基本的にはスズメと鳩とごはんを食べています。

 

行きたくないなぁ、座ってたいなぁ と思いながら、

重すぎる腰をあげて営業を周り、

しばらくしたらまた同じ公園に帰ってくる

帰巣本能がサラリーマンにはあるんじゃないかなぁ。

 



 

あ、門前払いは、なれっこです。

個人宅への営業はすべての人がお客様なので、一件一件インターホンを鳴らして、

「チラシだけでも受け取って下さい」と言っています。

 

 

カメラ付きのインターホンには、

とても情けない汗だくのぼくが映っているんだろうなぁと思いながらも、

なるべく笑顔で届いてくれてるのか分からない独り言を発している。

当然、「ちょうどよかった!銀行で預金したかったの!」なんて

素晴らしい出会いはほとんどない。

 


基本的にはインターホン越しに、「あっ、忙しいんで」で終了です。

そのことは、一日の訪問日誌にしっかりと記録。

たまに、ぼくは日誌を書くために仕事をしているんじゃないかと思うぐらいの、

ズタボロな一日を過ごすはめになります。

 


そりゃそうなんですけどね。

心地よい昼寝中にインターホンが鳴って、

わけのわからん営業マンだったら、

機嫌が悪くなるのも当然だし、

今日発売の好きなアーティストのCDの配達を待っていて、

来たのが汗だくのサラリーマンなら最悪ですから。

 


そういう意味では、NHKの集金の人達はすごいなぁと心の底から思います。

招かざる客として、最前線で闘っていらっしゃるのでね。

 


でもなぁ、せっかくなら何かたぐり寄せたいんですよね。

0から1を作り出したい変な欲求が働いてしまうんです。

営業の数字をあげたいというか、ドアを開けてほしいというか、

関わり合いを作り出したいなぁとぼんやりと考えるんです。

 

 

たとえば、「いま忙しんです!」と言われた人の中で、

もう一度訪問しようと決めている条件があります。

 

美味しい匂いがしてきた家

 

ここには、時間と日を変えて行くようにしてます。

なんとなく、美味しい匂いのする家は話を聞いてくれる気がするんですよね。

分からないけど、きっとしあわせな家庭なんじゃないかと思ってしまって、

ぼくはそういう人と関わり合いを持ちたいなぁと。

 

 

たとえば、唐揚げのいい匂いがしてきた家にもう一度訪問するとします。

門前払いの可能性が高いですが、たまに開けてくれる人もいる。

たぶん、前回は本当にタイミングが悪かっただけの人。

 

 

「このあいだは、すいませんでした

 唐揚げかなんかの美味しい匂いがしてて、準備で忙しい時間でしたよね」

 

 

この余分な話をできるかどうかは、

はじめましてのお客様とのやり取りですごく重要なんです。

顔をあわして話をするのは初めてでも、

そこには共通の話題がひっそりと存在している。

 

 

美味しい匂いにしあわせになったぼく

晩ごはんの準備中に邪魔をしてきた銀行員

 

 

一見、最悪な初対面に見えますけど、

何かをつかみ取るためには、

マイナスでさえも大切なヒントになってくるんです。

 


相手にとっても、無よりもボンヤリとした記憶があったほうが、

話を聞いてもらえる可能性はすごく高まるなぁと。

 

 

だから、本当に迷惑な話なのですが、

ぼくはピンポン周りをするときは、

お昼前か夕方にすることが多いんですね。

 

最初から、ダメなことを分かったうえで、

美味しい匂いを嗅ぎにまわっているんです。

なんとなく、もう一度行きたい家を探している感じで。

もはや、ヨネスケです。あんなに強引ちゃうけど。

 

 

 

ただし、美味しい匂いのする家を探す方法には注意点がありまして、

 

 

…マンションだと、構造上、匂いの錯覚が起きるんですよね。

つまり、お隣の家の匂いだったりする時があって、

「なに言ってんだこいつ?」という顔をされる時がある。

 

そんな時には、こう返すんです。

 

 

「あれ?なんか、いい匂いしてるなぁと思ってしまってて、煮物みたいな醤油の」

 

 

煮物を一度もしていない家なんて無いので、

これで大体の関係性を生むことができます。

食べ物の話をできるようになると、

もう仲良くなれた気がしてきます。

 

 

そして、

気づいたころには、その人の家でお昼ご飯をよばれたりしてるんですよね。

営業成績は上がらずとも、食費が減ったりするんです。

給料が上がらずとも、出費が減ったりするんです。

 

 

仕事変えたほうが良いのかなぁ。

どうなんでしょう。

 

 

でっかいしゃもじを持って、歩き回ろうかなぁ。

 

ぜひ、営業で悩んでいる人は参考までに。