その手が向かう先、ぼくの特茶あり。
リュックサックを買った。
ふだんはいつも、
大好きなドラえもんの手提げかばんに、
ノートとお茶を入れて、
特に目的もなく外を散歩するのだが。
東京へ勉強しに行くことが増えた。
目的ができると荷物も多くなる。
ドラえもんのかばんも四次元ではないので、
なかなか許容量がしんどい状況になって、
この度リュックサックを導入することになったのです。
手提げかばんの好きなところは、欲しいものをすぐに取り出せるところ。
電車に乗ってても、道を歩いていても、
いつでも瞬間で読みたい本が出てくるし、飲みたいお茶が出てくる。
しかし、リュックサックはそうはいかない。
一度、肩から降ろして、チャックを開けて、中身を物色。
ようやく欲しい物を手に入れ、また背負いなおす。
はぁ、めんどう、めんどうだ。
…
おっ、ちょいと待とう。
横にポケットが付いている。両サイドにある。
なるほどね、これだよ。これ。
ペットボトルは、ここに入れたらいんだな。
180円で買った特茶の500mlが、ピッタリはまる。
すごい便利だ。
歩きながらでも、後ろに手をまわせば、
侍が刀を抜くように、
サラリーマンは特茶を抜ける。
コレステロールを切り捨てろ。
脂肪の吸引をお助け申す。
ちょっとだけ強くなれた気がしてきて、
背中に大きな使命を背負っているような気もしてきて、
多分それは荷物が多いだけなんだけど。
電車に乗って、リュックサックをお腹のほうにまわし、席へ座る。
となりに、おなじような体勢で、赤ちゃんを抱えた女性が座った。
ジーッと視線を感じる。
これはいかん、見つめられている。
どうしよう。どうしよう。
ぼくが見つめかえすと、怖いかもしれない。
でも、見たい。
ぼくも、ジーッとみた。たぶん、きっと、女の子だ。
しばらく僕をみたあと、
赤ちゃんは手を伸ばしてきた。
その手が向かう先、ぼくの特茶あり。