得も損もない言葉たち。

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日常をひとます、休まず。

あなたのクスッとをください。

バイキングは、夢である。

 

食べ放題が好きだ。

 

小さいころ、はじめてバイキングへ連れて行ってもらった日、

まさにそこは夢のような場所だった。

ここぞとばかりに、から揚げやお肉を皿に盛る。

好きなものを、好きなだけ。

気持ちばかりのサラダで、お母さんの様子を伺ったりした。

 

この大きなお皿に、何を乗せても怒られない。

すこしだけ、大人になった気分で、

 

おっこれはええな

ここにちょっとだけ色味をつけておくか

 

みたいな感じで、すこしだけアーティストちっくな雰囲気まで湧き出てくる。

 

 

 

なぜ、こんなことを思ったかって、

昨日ぼくは食べ放題へ行ったんです。

 

しゃぶしゃぶとお寿司が食べ放題というお店。

 

・・・もう一度。

 

しゃぶしゃぶとお寿司が食べ放題。

夢です、夢。

大人のぼくにも、まさに夢のようなお店。

 

お肉とお寿司は、店員さんにオーダーする。

牛を何枚、豚を何枚、お寿司は何と何とを2貫ずつといった感じで。

数分もしないうちに、テーブルの上には夢が広がる。

 

 

野菜はといえば、サラダバーのように、

たくさん盛られたコーナーから好きなものを収穫する。

 

白菜、しいたけ、えのき、ねぎ、豆腐、じゃがいもスライス、だいこん、中華めん。

そのほかにも鍋に入るお肉以外のものが並んでいます。

 

おっきなお皿を持って、たくさんの人たちが、

鍋にいれる具材をえらんでいくのですねぇ。

 

 

土曜日の夜は、たくさんの家族連れ。

ぼくも、ウキウキでおっきなお皿を持って列に加わります。

 

 

あ、ぼくバイキングで必ずすることがあって、

それが、頭のなかで実況をするってことなんです。

 

 

ちょっと大人の顔をした少年の、

バイキングっぷりを観察したり。

 

トングを持って子どものような目をしたおじさんの、

バイキングっぷりを観察したりするんです。

 

そして、その動きを頭のなかで実況する。

 

 

 

さぁ、ケンちゃん(仮)がいま、ポケモンのトレーナーに身をつつみ、

堂々と入場してまいりました。

左手には自分の顔よりも大きなお皿。

右手にはカチカチと鳴らす黒いトングです。

なにをとるのか、ファーストタッチはなにか。

 

う~ん、ここは最初は白菜に手をつけるのが一般的ですが、

まだまだ若いルーキーです。

その風貌にまどわされて、じゃがいもスライスに手を出すのではないでしょうか。

 

どうする。どうするんだ。

 

なんと、まさかの中華めんだぁ。

中華めんを何回も何回もつかんで盛っている~。

そして、横においてあるうどんも、乗せたぁ~。

 

出来上がったのは、中華めんとうどんの山。

 

しかし、ケンちゃん(仮)は動かない。

まだいく、まだいくのです。

絶妙なバランスで成り立っている山に、さらに麺をのせていく。

 

 

ぼく、あなどっていました。

彼のかりそめの姿にまどわされていました。

ケンちゃんは、うどんや中華めんをとった。

つまり、食べ放題の〆へとやってきている。

 

ぼくなんかより、ずっとずっとベテラン選手だったのです。

だからこそ、あんなに絶妙なバランスのパフォーマンスを披露できるのです。

 

 

何食わぬ顔、麺食う顔をして、

彼はどこかへ消えて行きました。

 

 

圧倒的なバイキングを目の当たりにして、

 

 

ぼくはと言えば、

白菜やしいたけを皿にのせ、

じゃがいもスライスをすこしだけ。

色味を気にして、にんじんを気持ちばかり。

 

 

だめだ、完全に負けている。

好きなものを堂々とやってきてかっさらっていく、

あの少年の姿が忘れられない。

 

 

にんじんをそれだけ乗せても、ほとんど意味がないのに、

色味なんかを気にして置きにいってしまっている。

どうせ席にもどったら、そのまま鍋の中に消えていくのに。

もっと、もっと、自分のためのバイキングをしなけりゃいけない。

そうだ、ここはぼくの夢だ。そしてみんなの夢だ。

誰かに見られているから、食べる物を選ぶなんて間違っている。

 

 

ぼくの夢は、ぼくが作るんだ。

 

 

待ってろ野菜たち。

次のタームで来るときには、

驚きのパフォーマンス見せてやる。

 

Mr.バイキングであるケンちゃん(仮)に負けてたまるか。

 

 

 

並々ならぬ決意を抱き、席へ戻ろうとすると、

 

 

 

自分の顔ぐらいの大きなお皿に、

お花のようにお野菜を綺麗に盛り付けている、

シゲオさん(仮)(50代)がにんじんを刺し色に使っていました。