得も損もない言葉たち。

日常をひとます、休まず。

あなたのクスッとをください。

生きてるから、目が輝くんだね。

 

 「あ。目が輝いてる」

 若干、いや、かなり周りをおいてけぼりにしている生物の先生の教室。

 食らいつくように僕は先生を見つめていました。

 

 

 

 ぼくの好きなものは、漫画やら音楽やら映画やら沢山あります。

 小説やら、あとは芸能人やら。あげていけばキリがありません。

 たぶん、みんなそれぞれ好きなものを持っているはず。

 で、人の目が輝くときってのは、その好きなものについて語っている時。

 

 勉強している学問の話や、趣味の話とか、こだわりの仕事の話。

 聞くのが本当に大好きです。

 目が輝いているし、楽しそうにみんな色んな話を教えてくれます。

 そして、ぼくはそれをおいしく頂くのです。

 

 「そんな考え方があるのか」

 「ぼくの生活にこんな関係があるのか」

 「アホな話やけど、おもろいなぁ」

 

 そして、次は自分の番として、一生懸命に好きなものについて語るのですが、

 気づいたら相手をどっかにおいてきてしまうのです。

 

 

 知ってますか?

 ドカベンの作者の漫画で、あぶさんこと景浦安武の息子は景浦景虎という名前です。

 名前の由来は上杉謙信の幼名からきていて、あぶさんは謙信の大ファンなので

 このような名前をつけたんですが、それがまた面白くて・・・・。

 

 ・・・・

 はい、おいていきました。

 

 

 みたいなことです。

 個人的にはそれぐらいの熱量で語っている人に必死で食らいつくのが大好きです。

 冒頭の高校時代の話もそれです。

 

 勉強が嫌いでした。本当に嫌いでした。

 いまは、ちょっとだけ新しいことを知るのが楽しいと思えてきましたが。

 ある日の昼下がり。

 たしか、かなり眠たかったので午後の授業だったと思います。

 生物の授業でした。化石の話をしていたと思います。

 地層がどうとか、何年前の化石はどうでとか。

 

 その頃は、まったく勉強にも身が入らず、

 学校をサボって笑っていいとも!を見ていたような毎日。

 授業も教科書を見ているようで半分寝ているような状態でした。

 テストに出るとか受験にいるとかそんなん関係ないわ、って。

 でもね。先生の意外な一言で、ぼくの眠気は飛び、目線は前を向きました。

 

 「みんなは、ジュラシックパークをみたことがあるかい?

  スピルバーグが映画化した小説で、ぼくはあれが大好きなんだ。

  あれは、ぼくにとっての浪漫なんだよ。」

 

 学校の昼下がりの教室で聞こえてくるはずのないワードが飛び出してきました。

 スピルバーグジュラシックパーク?浪漫?

 映画が好きだったぼくは、先生の顔を見ました。

 普段の彼の語り口は料理で言う、すまし汁。

 その時の先生は、サーロインステーキ!と言った感じの熱量を感じたのです。

 

 そして、恐竜を琥珀から採取したDNAで復元するという方法について、

 単なる作者の妄想から書かれた話ではなく、

 本当にできる可能性があるということを僕たちに語りかけます。

 いつもなら、教科書をにぎる手は、ジュラシックパークの小説を持っていました。

 

 「あ。目が輝いている」

 味気ない表情をいつもしていた先生の目は『キラッキラ』でした。

 僕は何だか嬉しい気持ちになったのを覚えています。

 

 先生が好きなものについて語っている!

 本当に大好きなんだなぁ!

 へぇ、こういう考え方もあるのかぁ。

 先生も、こんなに壮大な夢を抱いているのかぁ。

 

 なんて聞いていたら、あっという間に授業が終わるチャイムが鳴りました。

 ちょうど鳴ったわけではないですが、それだけあっという間に。

 

 あれが僕の原体験だったのだと思います。

 好きなものを話している人の話が聞きたい。

 好きなものを話している人が好きだ。

 好きなものをどんどん増やしたい。

 輝いた目をしている人の話を聞きたい。

 そして、面白い話をどんどん聞きたい。

 こんなことを考えていたら、あの日の授業の記憶が引き出しから出てきたのです。

 

 

 美談にしようとするわけでは無いですが、

 その先生は進路指導室の担当をしていました。

 受験をまったく考えていなかったぼくが、やっぱり大学に行こうと思った時に、

 助けてもらおうと思ったのはその生物の先生だったのです。

 理由は、あの日の授業にありました。

 

 『好きなものをあんなに楽しそうに語る人を、信用しないでどうする』

 

 受験の結果はさておき、大変そこからお世話になったのを覚えています。

 

 

 

 

 同じような話が、実は歴史の先生にもありまして。

 この先生が僕の心をひきつけた話は、徳川慶喜がいかに・・・・。

 

 

 

 ・・・・

 

 

 読んで下さっているかたを、おいてけぼりにしそうなので、

 今日はここまでにしておきます。

 

 

 あなたの好きなものは何か、嫌いなものを聞くよりもずっと楽しい時間です。

 もし、いま、誰かを思い出したら、久しぶりにおしゃべりしても、

 いいですよね。