得も損もない言葉たち。

日常をひとます、休まず。

あなたのクスッとをください。

とびこむ営業は、おもらしの連続だ。

 

 なにも、情報漏えいのお話ではありません。

 ぼくは銀行の営業をしていますが、

 マネーロンダリングのお話でも、

 インサイダー取引の話でもありません。

 

 例えのお話なのです。

 

 銀行員の営業は、とびこみ営業のようなものです。

 インターホンを鳴らして、自分の会社の名前で扉をあけてもらう。

 それは、すごく難しいこと。

 だけど、もっと難しいのは、実際の数字を獲得すること。

 

 

 これが、例えば、おいしい食べ物だったら、

 もっと良い顔をしてオススメできるのですが。

 ぼくが売るのは、運用商品。保険や、投資信託

 お客様のお金を減らす可能性があるものなのです。

 

 

 

 さて、漏らす話なのですが。

 

 

 最近、おなかの調子がすこぶる悪くてですね。 

 自転車で営業をまわっていたら、

 もう、限界がやってきたわけです。

 近くの商業施設のトイレに飛び込むと、

 個室の扉が1つだけオープン。

 ギリのギリで、助かったわけです。

 

 

 ただ、みなさんも知ってのとおり、腹痛には波がある。

 そして、その波を人は察知する能力を身に付けています。

 ぼくも、第二波、第三波の予感がしたので便器でステイしました。

 

 狙い通りの、第二波。

 これが、またまた、大きな波。

 

 苦しんでいるときに、その音は鳴りました。

 

 

 コンコン コンコン コンコン

 

 

 それは、外から便器への扉を叩く、SOS。

 そのテンポの速さから、外にいる彼の限界は容易に感じ取れる。

 だが、ぼくだって闘っているのだ。限界なのだ。

 

 

 こんな状態で、外で困っている人のために、

 自分が出しているものを止めてまで便座を譲る人がどこにいるだろう。

 全てを出しきって、お尻を拭いているタイミングならば、

 すこし急いでズボンをはいてあげることは、可能なのかもしれないけれども。

 

 

 洋式の便座に座りながら、苦しんでいる自分を、

 すこしだけ俯瞰で見たときに、気づいたことがあった。

 

 

 「ぼくの仕事って、トイレの扉をノックするのと同じだ!」

 

 

 お金を使わないっていう人はそうそういない。

 増やしたいけれど、減らしたい人なんていない。

 みんながほしい物を買いたい。おいしい物を食べたい。

 そんな願望を抱いている。

 

 

 そこへ、突然現れたぼくが、お金を減らすかもしれない投資を提案する。

 減らしはしないけれど、貯金をしませんかと提案してくる。

 

 

 ・・・だれが、協力してくれるのだろうか。

 

 

 トイレで言うならば、うんちを出したい時に、

 突然、コンコンとノックをされて誰が出てくれるのだろうか。

 ぼくには、そんなことは到底できない。

 たとえ、相手が限界ギリギリだったとしても、

 泣く泣く、知らないフリをするしかないのだ。

 

 

 

 

 毎月、毎月、ノルマに追われている。

 投資信託を何千万売りなさいとか、保険をいくら成約しなさいとか。

 

 

 なんだかんだで、乗り越えてきた。

 

 

 それはなぜか。

 もしかしたら、お尻を拭いているタイミングで、

 ぼくがノックをしたから協力してくれたのかもしれない。

 これは、運である。運。

 

 

 もうひとつの要因はこうだ。

 

 

 お客様の中には、自分がうんちをしたいのを我慢してまで、

 ぼくに力を貸してくれるひとがいるということだ。

 

 

 「仕方ないなぁ」

 って顔をして、ぼくの提案を聞いてくれる人がいるのだ。

 

 

 そう思うと、この仕事は人に感謝しっぱなしだなぁと改めて感じた。

 

 

 そして、うんちを出し終わっても、

 ずっとスマホをいじっている人を、

 いかにしてトイレから出すかを考えることが、

 ぼくの今後の営業成績をあげるんじゃないかと思ったのである。

 

 

 

 

 

 

 ということを考えていたら、いつのまにか第三波も通り過ぎていたのだ。

 外の彼のノックもいつのまにか止んでいた。

 

 どうやら、助かったようだ。

 よかったよかった。

 

 

 あ。

 

 

 解放感に浸りながら、そのあと、何軒もまわった営業は、

 おもらしの連続でしたとさ。