ホッチャラ行きにしてやろう。【ショートショート】
彼らは悩んでいた。そして、苦しんでいた。
すこし表現が複雑ではあるが、苦しませることを考えることに、苦しんでいた。
「では、一体どういうものをヤツらは苦しむのだ」
「それが、いまだに、よく分からないのです」
なぜ、このような悩みに彼らは直面したのだろう。
それは、いわゆる周りが嫌がる仕事をなすりつけられたからだ。
生物を苦しませること、罰を与える仕事は後味が悪いからだ。
また、仮に殺すに至っても、苦しませないといけないからだ。
その絶妙なところを探すために、会議は毎日続いていた。
誰かが言った。
「資料を見ててもラチがあかない。外に出よう」
これまで彼らが外へ出なかったわけは、よく分かる。
見知らぬ星での調査は、怖いからだ。恐ろしいからだ。
渡された資料をのぞき見してみたところ、危険情報にはこう書かれている。
『時折、ミサイルが発射されている』
『われわれの星に、移住する計画を練っているものがいる』
『全員が、歩きながら小型の機械を操作し、おなじ場所に集結する』
これだけ聞いて、調査に出かけないのに十分な情報だろう。
しかし、期限は迫っていた。
「もし仮に見つかったりしたら、解剖されてホッチャラ行きだ。
彼らの言葉でだと、地獄行きだ」
「でも、仕方ない。この仕事を成し遂げないと報酬は貰えないのだから」
会議の最後に、くじ引きが行われた。
そして、一人の調査員が決まったのだ。
与えられた任務は、地球人を悶絶させ、苦しませる罰を探し出すこと。
そして、数日が経ち、ひとつの罰を見つけ出してきたのだ。
会議室に戻ってきた調査員の顔は晴れやかだった。
そして、プレゼンテーションが行われた。
・地球人は必ず、声を出して悶絶すること。一瞬ですること。
・彼らの中で、“地獄”という表現がされていること。
・史実としても、拷問として利用されていること。。
これしかない。もう、これほどのものはない。
罰が決まった。ようやく決まったのだ。
長い会議は終わった。
そして、罰を執行することで、この仕事も終わりを迎える。
彼らは、満足げな顔を浮かべて、自分たちの星へと帰っていった。
ここは、とある星。
不時着した、地球から来た宇宙船がひとつ。
パイロットの二人は、服をはぎ取られて並ばされている。
そして、その前には池のような大きな容器。
なかには、たっぷりの水分。
「お前たちは、我々の星へ不法に侵入した。
これから、罰を与える。それに耐え抜いたならば、生かして星へ帰してやろう。
ただし、もし死んだのならば、それはそこまでの運命だったと思うがいい」
執行人が、地球人たちに向けて話をした。
しかし、彼らに伝わっているのかは分からない。言語が違うから。
まぁ、どこの星も形式にこだわるのだろう。
そして、裸の地球人は、その容器に無理やり入れられた。
「うぅ~~~~~~~~~~」
「あぁ~~~~~~~~~~」
「ぐぁぁ~~~~~~~~~」
「くぅ~~~~~~~~~~」
辺りに、言葉にもならない声が響き渡る。
大成功だと、罰を考え出した彼らは喜んだ。
そこから、数時間後の話ではあるが、
宇宙船に乗って、地球人は喜んで帰って行った。
全く、苦しんだ表情もしなかった。
悶絶したのは最初の数分。そこからは笑顔まで見せるぐらいだった。
「なんと、我慢強いやつらなんだろう。相当の訓練を積んだに違いない」
呆気にとられながら、約束した以上、彼らは地球人を外へ送り出した。
地球人のパイロットたちが、レポートを書いている。
『温泉に入れてくれる星を発見した
湯加減もちょうどよく、長い宇宙の旅にはピッタリである』